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後日談 『おしおきー40』
雅紀が何を悩んでいるのか、手に取るように分かる。この心優しい恋人は、自分のことより俺と秋音のことを心配してくれているのだろう。
「俺はこだわらねえけど、秋音がきちんとしたいって気持ちは分かる。
例えばさ、どちらかが事故に遭ったり病気で倒れた時。身内ならすぐに連絡もらえて病院に付き添ったり出来るだろう?大事な場面でどれだけ相手に寄り添えるかってのは、やっぱりただの同居人より、法的に守られた身内の方が強いんだ。そういったこと、諸々含めて、秋音はおまえと一緒に生きたいって思ってるんだろうな。確かな絆ってやつが欲しいんだよ」
「……絆……」
「そ。ただ好きだから側にいたい。そこからもう1歩踏み込んでさ。覚悟を持ちたいってことだよな。
一緒に生きるってのは、いいことや楽しいことだけじゃねえだろ。ただの仲良しごっこや甘ったるいだけの恋人じゃねえ。おまえと本物の家族になりたいんだよ」
「本物の……家族……」
「秋音は家族ってやつに、とことん縁がねえだろ。で、おまえには両親はいるけど、本当のおまえを受け入れてもらえてない。
人を愛するってのはさ、自分に都合のいい部分だけ受け入れるんじゃダメなんだ。相手の全てを、いいも悪いも全部引っ括めてさ、丸ごと受け止めて慈しむってことなんだと思う。秋音はおまえとそういう関係になりてえんだよ」
雅紀は目を潤ませて、じ……っと暁の顔を見つめた。暁はにかっと笑って、雅紀の頭をがしがし撫でてやり
「ま、おまえが怖がる気持ちも分かるぜ。俺たちのことを一番に考えてくれる優しさもな。
でもさ、怖がって、相手気遣ってばかりじゃ、本当に欲しいものは手に入らねえよ。
俺も秋音も強いぜ。おまえの丸ごと受け止めるくらいの度量もある。
だからさ、勇気出して飛び込んで来いよ。もっと俺らを信じろ。がっちり受け止めてやるからさ」
笑いながら両手をひろげる暁の顔が、涙でぼやけていく。
……ああ。この人は、本当に。
どうしていつもいつも、俺が欲しいと思う言葉をくれるんだろう。
どうしてこんなにも、俺の気持ちを分かってくれるんだろう。
盛り上がった涙が、ぽろんと零れ落ちた。それを見て、暁がちょっとだけせつなそうな顔をする。
「……暁さん……俺……俺……」
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