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春の儚き夢3

格好いいんだよな…あきらさん。 モテないなんて言ってたけど、きっと嘘だ。部屋に呼んだことはないみたいだけど、彼女いないとは…言わなかった。女と会う時はいつもホテルって…。 そうだよな。あのルックスで、物識りな上に話し上手で。楽しいし、なにより優しい。 抱き締められて、頭撫でられてると、ドキドキするけど…すごく落ち着くんだよなぁ…安心するっていうか。包まれて守られてる感じ。 …どんな女性なんだろ。きっと、あきらさんにお似合いの綺麗な人だな。 あの腕に抱き締められて、キス…されて。 あの指に触れられて…。 どんな風に彼女抱くんだろ、あきらさん。 キス…すごかったもんな…。 なんだろ、熱くてエロくて、繋がってるの口だけなのに、身体中が溶けてひとつになってくみたいで、めちゃめちゃ感じた。 今だって、ちょっと想像してるだけで…腰のあたりがゾワゾワして… …って、俺ってば、何考えてんだよ~。やばっやばいって。うっかり… 「どうした?」 「っえ?あっなに?」 「なんか赤い顔してるぞ?」 「やっ…いやっ別に…」 「疲れたか?だいぶ集中して撮ってたもんな。ちょっと一服するか」 「あー…うん」 あきらは、カメラバッグとデイバッグを持ち上げて、さっききた道の方へ歩き始めた。 「あの道んとこに、ベンチテーブルあるだろ。三脚はそのままでいいからさ、とりあえずあそこで休もうぜ」 「はいっ」 まさきも荷物をひっつかんで、急いで後に続いた。 変な想像していたせいで、顔が熱いだけじゃなく、余計なところが反応しかけてる。 …俺のバカっ あきらさんに気づかれたらどうすんだよっ っつか何想像してんだよっ恥ずっ ベンチテーブルにたどり着くと、あきらは荷物を置いて 「俺ちょっと自販機で飲み物買ってくるわ。雅紀は何がいい?」 「あっじゃあ俺、買ってきますよ」 「いいから座って煙草でも吸ってな。三脚と荷物の番よろしくな」 言いながら歩き出かけて振り返り、 「コーヒーでいいか?」 「あっはい」 「了解。んじゃいい子で待ってろよ」 何故か嬉しそうにまさきの頭をくしゃくしゃ撫でてから、文句を言う前に広場の方に走って行ってしまった。 「んもぅ~」 まさきはぐしゃぐしゃになった髪の毛を、手でなでつけながら、ベンチに腰をおろして、ポケットから煙草を取り出す。 …あきらさん、変に思わなかったよな?とりあえず落ち着け、俺。っつーか静まれ、バカ息子。 煙草に火をつけ、深呼吸するみたいに、吸って煙を吐き出す。 …なんかもうどうしちゃったんだろ、俺。欲求不満なのかな…。たしかに最近そういうのご無沙汰だけど。 恋人と呼べる関係ではないけれど、それなりの付き合いの男はいる。 アパートと仕事場の往復だけの単調な毎日で、たまに無性に人恋しくなると、まさきの方から連絡を取り、ひと月に1.2回食事して、その後ホテルに行って。 恋人と呼べないのは、まさきの方に、そこまでの気持ちがないせいもあるし、相手が既婚者だからでもある。 東北の大学に在籍していた時に、男関係でかなり酷い目に遭った。結局、その後のゴタゴタが響いて、卒業後に向こうでやりたかった仕事も諦め、故郷に近いこっちに、逃げるようにして戻ってきた。 しばらくは、虚脱感と男に居場所を知られる恐怖もあって、定職につかずにフリーターをして、住む場所もあちこち変えていた。 ようやく精神的にも落ち着いてきて、今の会社に就職したのが3年前。 安定はしてきたが、男関係でまたトラぶるのは懲り懲りだった。 大学の頃の彼だって、付き合い始めはごく普通だったのだ。向こうから誘われ口説かれて、年上の落ち着いた人で、好きなタイプだったし、同じ性癖の数少ない存在だったから嬉しくてOKした。 でもそのうち、やたら束縛が強くなった。こっちの生活や交友関係にも何かと干渉してきて、だんだん嫌気がさしてきて、別れ話を持ち出したら、あっさり了承された。揉めなくてよかったと、ほっとしていたら、ストーカーされ、文句を言いに行ったら、そのまま男の家に監禁された。2週間後にやっとの思いで逃げ出したが、その間のことは思い出したくもない。 そんな経験があったから、こっちに戻ってきてからも、男との付き合いには慎重だった。 深みにハマらない人。割りきって遊べる人。一定の距離を保てる人。 そうしてたどり着いた今の彼は、1年半ほど前に1人で飲みに行ったバーで知り合った。大手の会社に勤めていて、口説かれて左手の薬指の指輪を指摘したら、あっさり既婚者だと認めた上で、もしよかったら連絡してとプライベート用の名刺を渡された。 遊び慣れてそうだったし、人恋しくもなっていたし、まさきの方から連絡を取った。 …そう言えば、あの人と最後に会ったのって、去年のクリスマスイブだっけ。4か月も連絡してなかったんだ…。

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