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後日談 『おしおきー44』
我慢出来ずに、結局秋音の方が先に雅紀に手を出した。約束の1ヶ月にはまだ1週間以上あるが、もはや解禁だろう。
暁はいったんくちづけを解いて、柔らかい唇をぺろんと舐めると
「なあ……じゃさ、風呂入る前に、腹ごなしに少し運動しねえか?」
形のいい耳をはみはみしながら、低い声で囁くと、雅紀はぽっと目元を染めながら、暁の顔を睨みつけた。
「それは、お風呂、入ってから」
咎めるように呟く声が、ちょっと掠れている。キスだけでまた反応してしまったのは、どうやら俺だけではないらしい。
暁はにやっと悪い顔で笑って
「お。後ならいいんだ?雅紀くん、エロいな」
つい口をついてしまった揶揄いに、雅紀の頬がぷくっとふくれる。
「エロいのは、暁さんの方でしょ」
尻に回した手を滑らせ、前の方にも触れようとしたのを察して、雅紀はすっと腰をひき
「いいから先、入ってて。俺もすぐ行くから」
暁は首を竦めて雅紀の身体を離すと
「すぐ来いよ~」
そう言って片目を瞑り、タオルを掴んで部屋から出て行った。
雅紀は火照った顔を両手で押さえながら立ち上がり、トイレに向かう。
お腹がぱんぱんだから、というのは言い訳だった。加減して食べたからそれほどじゃない。
昨年、暁とここに泊まった時のことを思い出していた。きっと一緒に露天風呂に入ったら、あの色気ダダ漏れの暁は、すぐにちょっかいをかけてくるだろう。実はそれをちょっと期待している自分もいたりする。
だから、暁の仕掛けてくる行為にすぐに応えられるように、こっそり身体の準備をしておきたかった。
……暁さんの言う通り、俺ってエロいのかも……。
庭の隅の脱衣スペースで、裸になって腰にタオルを1枚巻くと、雅紀は引き戸を開けて露天風呂に出た。
暗闇に浮かぶ上弦の月。
露天風呂の端の岩場に、腰をおろしている暁の姿が、月明かりで照らし出されている。
特別鍛えてはいないと言っていたが、日本人離れした長身に、綺麗な筋肉のついた、均整のとれた身体。男の自分から見ても惚れ惚れする、男らしい美しさだ。
そして、何度見ても、胸がときめいてしまう大好きな顔。
……やっぱ、すっごい格好いいな……。
やっと出てきたかと思ったら、入口で立ち止まり、ぽやんとこっちを見ている雅紀に、暁は苦笑して
「おーい。何やってんだよ。んなとこにいたら寒いだろ?早く来いよ」
手招きする暁に、雅紀ははっと我に返り、照れたようにはにかんで、暁の側に歩み寄って行った。暁は立ち上がり両手を広げて
「ほれ。おいで」
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