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後日談 『おしおきー83』
ランチメニューの中から、2人とも同じおでん定食を頼んだ。
「ほんとはさ、夜に酒飲みながら、カウンターで好みのもんをつまむっての、やってみたかったけどなぁ」
「わ。カウンターって俺、緊張しちゃいそうだけど、なんかいいな。そういうの、いつかやってみたい」
「また今度来た時のお楽しみな。今日、カウンターにしなかったのはさ、ちゃんと理由があるんだぜ」
ちょっと意味ありげに片目を瞑る暁に、雅紀は不思議そうに首を傾げた。
「……理由……?」
「そ。飯食ったら話すよ」
ほどなく、店員が2人分のおでん定食を運んでくる。
「さ。食おうぜ。美味そうだ」
「はいっ」
湯気をたてているおでんの汁は、透き通るような黄金色だ。出汁のいい香りが食欲をそそる。2人はいただきますをしてから箸を取った。
「んー。あっふいけど、おいひい」
「おまえな、猫舌だろ。ちゃんとふーふーしてから食えよ。舌、火傷するぜ」
暁に指摘され、雅紀は箸で摘んだ大根をふーふーしてから口に入れ、幸せそうに頬をゆるめた。
「汁の色薄いけど、ちゃんと味しみてる。すっごく美味しい」
「だな。俺は濃い汁でくたくたになってるおでんも好きだけどさ、素材の味がいきてて、こういうのも美味いな」
「うん。薄味だからいくらでもいけちゃいそう」
「たまごとかじゃがいもとかさ、もっと食べたきゃ追加も出来るぜ」
しばらく2人ともはしゃぎながら食事に専念した。単品で追加したものが運ばれてくると、幸せそうにそれを頬張る雅紀を、暁は満足げに見つめていたが
「なあ、雅紀。こないだ貴弘から提案があった件な」
おもむろに話を切り出した暁に、雅紀はちょっと改まったような顔になる。
「秋音とじっくり相談してさ、結論が出たんだ」
「うん」
「出資の件は受けることにした」
雅紀はほっとしたように微笑んで
「そう。よかった。俺もその方がいいって思ってたから」
「それでな。実際、何を始めるかってとこでさ、俺と秋音の考えがなかなか一致しなかったんだけどな」
「結論、出たんですね」
「ああ。決めた。でさ、おまえにも手伝って欲しいんだ。俺達の生涯のパートナーとしてな」
雅紀はふんわりと微笑み、頷いた。
「嬉しいな。俺で手伝えることあるなら、一生懸命頑張るから」
「もちろんだよ。俺たちのこれからの人生に、おまえがいないってのはありえない。俺たちは一生かけておまえを幸せにしていくぜ。だからおまえも、俺たちを幸せにしてくれ」
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