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想いのかけら5※
うとうとと微睡んでは覚め、また微睡み、次にしっかり目が覚めた時には、午前10時を少し過ぎていた。
相変わらず、暁にすっぽり包まれていて、完全に抱き枕状態だ。
そっと、下から暁の顔を覗いてみる。
……暁さん……気持ちよさそうに寝てる……。仕事、午後からって言ってたけど、まだ寝てても大丈夫なのかな……。
ぎゅっと抱きしめられているわけではないから、息苦しくはないが、暁の体温と煙草の匂い混じりの体臭に包まれていると、ドキドキして、なんだか落ち着かない。
起こさないように、そっと下の方に身体をずらしてみる。ダメだ。暁の両足でゆったりとガードされていて、これ以上はずり下がれない。
雅紀はもぞもぞと元の位置に戻って、今度は身体の向きを変えてみることにした。どうにかこうにか仰向けになり、そのまま暁にクルリと背を向ける。近すぎる顔との距離から解放されて、ほっとしたのも束の間……
ふいに、暁がう~ん……っと唸って、ぎゅうっと腕の力を強めてきた。後ろから抱き締められた状態で、両足もがっしり絡められてしまって、雅紀は息をのんだ。
これでは、さっきより密着度が増してしまって、まったく動けない。
……っていうか……これって……
雅紀の腰の辺りに、何やら硬いものが当たっている。多分これは、暁の息子さんの朝の生理現象で……。
その上、寝ぼけているのか、手持ち無沙汰なのか、暁の手が、もぞもぞと雅紀の脇腹付近をまさぐり始めた。
……っ……っっ……っ…
暁の手が動くたび、変な声が出そうになり、雅紀は必死に声を飲み込んだ。脇腹は雅紀のウィークポイントだ。くすぐったいだけじゃなく、かなり感度のよい性感帯で、好きな相手に触れられたらひとたまりもない。
……マズイって、ヤバいって……だめっ暁さん、やめてってば…
必死で身をよじり、なんとか逃れようとする。
雅紀は、暁が貸してくれたシャツ1枚しか、着ていない。その無防備な状態で、シャツの隙間から、暁の手が直接触れてくると、身体が勝手にびくびく跳ねて、熱い吐息がもれるのをこらえきれない。
「ん……ん…ぅん……んん…」
雅紀のものも反応していた。しかも暁の手が下にのびてきて、雅紀の勃ちあがったものに、その指先が触れそうになる。
……もうダメっムリっっ
「あああ……暁さんっトイレっ。俺トイレ行きたいっ。離してっ」
雅紀は思わず叫んでいた。その声に驚いたのか、暁はびくっと飛び起きて、腕を離して雅紀を解放した。
「んあっあー……ごめんっ。苦しかったか?あ、トイレな。1人で行けるか?」
雅紀は起き上がり、暁に背を向けたまま、無言でコクコクコクと頷くと、ふらふらと立ち上がり、壁を伝いながら、部屋から出て行った。
暁は、布団の上に起き上がり、ぼや~っと風呂場のドアを見つめる。
……恋する乙女どころか、けだものだな、俺。
さっき、雅紀の声に驚いて飛び起きたフリはしたが、実はもっと前から起きていた。
最初は、雅紀がもぞもぞと足の方にずり下がる動きで目が覚めて、なにやってんの?こいつ…っと、半ば寝ぼけながら様子をうかがっていたのだ。
芋虫みたいにもぞもぞしている、彼の動きが可愛くて、くすぐったいのを我慢して寝たふりをしていた。
そのうち雅紀が、クルリとこちらに背を向けた。
ほっとしている様子の彼に、つい悪戯心がむくむくとわいてきて、雅紀を後ろからぎゅっと抱き締めた。
ピッタリ密着して、彼の体温を感じているうちに、だんだん変な気分になってきて、愚息が元気に起き出してきた。
やばいな~と思いながらも、彼の滑らかな肌をなで回していたら、ピクピクしながら声をこらえている、敏感な反応にどんどん興奮していって……。
……や、だってあいつ、すっげー反応いいし。可愛いっつーか、色っぽいし。
雅紀の身体がビクつく度に、彼の腰がこすれて息子を直撃した。必死でこらえている彼の声も、だんだん艶を増していって……。
手を下に伸ばして、雅紀のそれに触れようとしたのは、もう完全に確信犯だ。雅紀のものも、反応してくれているのか、確かめたかったのだ。
……ああ。最低だ。わかってる。間違いなくけだものだ、俺。
でも……気づいてしまったんだ。
俺はあいつのこと、好きなんだ。
好きだから、触れてみたい。キスもしたい。
苦しんでいるなら、助けてやりたい。
弱っているなら、なんとかしてやりたい。
この気持ちが、恋かどうか分からないなんて、いい年して俺、どうかしている。
こんなの、恋に決まってんだろ。
俺はあいつのこと、そういう意味で好きなんだよ。
ストレートかどうかとか、男同士だからどうとか、
そんなの知ったことか。
俺は、雅紀に、間違いなく恋してる。
………って、開き直ってんじゃねーぞ、俺。
あんな弱ってる雅紀に、けだものっぷり発揮して、自分の欲望押し付けてどうすんだよっ
とりあえず、この愚息、落ち着かせて、飯の準備してやらなきゃな。
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