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番外編『愛すべき贈り物』3
橘 祥悟(たちばな しょうご)
俺が荒れていた頃に、一番長く続いたセフレ、橘里沙の双子の弟だ。双子っていっても性別が違うから、瓜二つってほどじゃない。でもまあ、顔のパーツとか全体の雰囲気なんかはよく似てる。
……そういや、あの頃はこれっぽっちも考えてなかったが。俺が雅紀といけるってことは、里沙と似てるこいつとも、ひょっとしていけちゃったりするってことなのか……?
ふいに浮かんだ素朴な疑問。
俺→里沙(女)=OK
俺→雅紀(男)=OK
俺→祥悟(男)=?
……?ひょっとすると……?
アホな思いつきに、暁がぼんやり祥悟の顔を見つめていると
「暁くん。今、何考えてたか、当ててあげようか?」
「……へ?」
祥悟はにやりとして身を乗り出し、暁の顔に息がかかりそうなほど顔を近づけて、艶っぽく囁いた。
「……それとも……実践してみる?俺と……ベッドで」
…………。
「……ばっ、」
暁は、ずさささーっと飛び退った。咄嗟に言葉が出ないのか、口をぱくぱくさせている。
「おまっ。ばばばかっ。な、なに言ってんだっ」
「暁くん、動揺し過ぎ。やっぱり図星だったんだ?」
祥悟は細い指で煙草を挟んで、口を押さえて笑っている。暁はぶすっと仏頂面をして
「おまえなぁ。冗談でも言っていいことと悪いことがあんだろが」
「あらら。俺のせい?君が邪なこと妄想するのがいけないんじゃない」
「妄想なんかしてねえっつの。おまえはエスパーかよっ」
暁ははああっとため息をつくと、また煙草を咥えて火をつけた。
目の前の男相手に、一瞬でもいけるかも?なんて考えた自分がアホらしい。
いやいやいや。ぜ~ったい無理だ。いくら祥悟が女顔で昔のセフレだった姉に似てたって、雅紀以外の男となんか、キスするのだってまっぴら御免だ。
……やっぱさ。雅紀は特別なんだよなぁ。キスも舐め合うのも擦り合うのも。ちんこ咥えるんだって、挿れるんだって、雅紀だったら平気だ。
……っつーか雅紀だからこそやりたい。いや……多分、もう俺、女も抱けねえよな。里沙相手でも勃たねえだろ。雅紀以外は、俺の息子が反応しねえ自信あるわ。
暁はちろっと自分の股間を見下ろした。こいつはもう、雅紀専用だ。
それなのに、だ。
このところ、雅紀の様子がおかしい。新しい広いマンションに引っ越して、自他共に認める甘~い蜜月期のはずが、なんだか雲行きが怪しいのだ。
事の発端は、2週間ほど前。
2人で新居用の細々したものを揃えに、街中に出掛けた。ロ○トやら無印○品やら、あちこち見て回って、ちょっとお茶でもするか、と入ったカフェで、偶然にも橘姉弟に会った。
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