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番外編『愛すべき贈り物』4
姉の里沙には、以前、やはり雅紀と一緒に入ったカフェで鉢合わせした。本命の恋人とデート中に、元セフレと会っちまった気まずさで、俺は明らかに動揺してたと思う。
案の定、俺と里沙が単なる友人じゃないと察した雅紀が、やっぱり自分は男だから、俺の恋人には相応しくないとしょげた。俺は自分の本気を示す為に、その日初めて雅紀を最後まで抱いた。まあ、あの時は結局のところ災い転じて福ってことで上手く収まったんだが……。
今回はどうやら、そう簡単にはいかないらしい。
問題は、セフレだった姉の里沙ではなく、今、目の前で俺を揶揄って遊んでやがる弟の祥悟の方だ。
カフェで会った時、里沙は前回同様、せっかくのデートを邪魔しちゃ悪いわね~っと、早々に店から出て行こうとした。暁は里沙のあっさりした態度に内心ほっとしたが、それを阻んだのは祥悟だった。
「へえ。君が暁くんをメロメロにしちゃった仔猫ちゃん?初めまして。俺は暁くんの昔のセフレの弟、祥悟。君のことは姉貴から聞いてたけど、想像以上に美人さんだね」
祥悟はものすごーく優しい笑顔で、俺の可愛い恋人に初っ端から毒を吐いた。雅紀は何の抵抗も出来ないまま、祥悟に顔を覗き込まれて、ピキピキに固まった。
「おいこら、祥。初対面でいきなりどんな挨拶だよ、それは。だいたいこんなとこで、デカい声でセフレとか言うなっつの」
「デカいのは暁くんの声でしょ。いいの?注目浴びちゃってるけど」
祥悟のしれーっとした指摘に、暁が慌てて周りを見回すと、興味津々の店の客たちと目が合った。
……うわ。間違いなく悪目立ちしてるだろ。
それもそのはず。橘姉弟はモデルだ。里沙はもう引退しているらしいが、祥悟の方はまだ現役のはずだ。
人目を惹く華やかな容姿に、日本人離れした長身。しかも身長だけだったら、俺は彼らより高いわけで……。
こんなのが3人集まっていたら、黙って立っていても注目を浴びる。更には、身長は里沙と同じ位だが、美人度で言ったら雅紀は恐らくモデル2人の上をいくわけで……。
「ちょっと。やめてよね、2人とも。いいからこっちに来て」
店を出ようとしていた里沙が戻って来て、何故か雅紀の腕を掴んで、店の奥のテラス席に引っ張っていった。雅紀はこれまた何の抵抗も出来ずに、情けない表情で後ろを振り返りながら連行されて行く。暁は慌てて2人の後を追い、祥悟もその後に続いた。
「もう。せっかく気を利かせてるのに、馬鹿みたいに目立たないでよ」
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