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番外編『愛すべき贈り物』5
テラスの一番端の、植込みで仕切られたテーブル席。椅子に座らせられておどおどしている雅紀の横で、里沙が仁王立ちで待ち構えていた。柳眉を逆立て、腕組みまでしている。
「や。悪いのは俺じゃねえだろっ。こいつがデカい声で余計なこと言うから」
「しーっ。声が大きいったら」
里沙に怒られて俺は口を噤んだ。隣で祥悟が肩を震わせて笑っている。
俺はこほんと咳払いをすると、おどおどしている雅紀に安心させるように笑いかけてから、隣の椅子に腰をおろした。
「俺は悪くねえぞ。祥が俺の可愛い恋人、苛めるのがいけねえんだ」
「うわ。酷いな。苛めてなんかいないよね。挨拶しただけでしょ」
「仔猫ちゃんだのセフレだの、言わなくていいこと言ってんだろうが」
祥悟はわざとらしくため息をつくと、俺と反対側の雅紀の隣に腰をおろした。
「だって俺、嘘は言ってないよねえ。ええと、雅紀くん……だったっけ。君も知ってるんでしょ? 里沙が暁くんと昔付き合ってたの」
「あ、あの……」
祥悟にまた顔を覗き込まれて、雅紀は掠れた声を出した。暁は慌てて雅紀を自分の方に抱き寄せると
「いい加減にしろっての。雅紀は人見知りなんだよ。んなひっつくな」
「過保護だなぁ。暁くん。恋人っていうより、まるで母親みたいだね」
「祥、絡むのはやめて。雅紀くんが可哀想でしょ。ごめんなさいね。私たち、もう帰るから」
「え。俺まだ帰んないけど。せっかく会えたんだし、雅紀くんともう少しお話したいな」
しつこい祥悟にいらっとした暁が、文句を言おうとした瞬間
「あのっ。は、初めましてっ。篠宮雅紀ですっ」
雅紀は暁の手を振りほどくと、祥悟の方を向いて、必死に声をあげた。
「すいません。俺、びっくりしちゃって。り、里沙さんとは前にお会いして、暁さんから昔のお付き合いとか聞いてました。でもあの、弟さんがいるって俺、知らなくて。失礼な態度になってたらごめんなさい。初対面、苦手で、すっごく緊張するんです、俺。だから、あの、暁さんが過保護とかそういうんじゃなくて」
つっかえつっかえ、でも懸命に話す雅紀に、祥悟はちょっと呆気に取られた顔をしていたが、やがてふっと柔らかく微笑んで
「ごめん。そっか。君、あがり症なんだね。無視されてるのかなって、勝手に誤解しちゃった。こちらこそしつこく絡んでごめんね」
雅紀はほっとしたように、顔の強ばりをといた。雅紀のぎこちない笑顔に、祥悟はにっこり笑い返して
「なるほどね。里沙から聞いてた通り、君って真面目で素直なんだね。暁くんの選ぶ相手だから、もっとスレた子かと思ってたんだけどな。あのね、雅紀くん。もし気を悪くしたんじゃなかったら、俺と友達になってくれるかな?」
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