457 / 605

番外編『愛すべき贈り物』6

祥悟の言葉に、雅紀はぱっと目を見開いて嬉しそうに頷いた。 「はいっ。あの、俺でよければ、こちらこそよろしくお願いしますっ」 祥悟はちらっと暁の顔を見た。暁は苦虫を潰したような顔で、そっぽを向いている。祥悟は蕩けるような笑みを浮かべて、雅紀の方に身を乗り出して 「じゃあ、よろしく。あ、早速だけどSNSアプリの友だち登録、ね?」 雅紀はあたふたとポケットからスマホを出して、祥悟に手際よく登録させられている。 ……なーにがお友だち、だよ。そんな可愛いこと言う玉かっつーの。しかもあのやろ、さり気にまた俺にまで毒吐きやがって。 「ごめんね。暁」 囁くような声に、暁が目を向けると、里沙が苦笑しながら両手を合わせていた。暁も苦笑して 「相変わらずだな、祥のやつ」 「ほんと。わがまま全開よ。今日だって私、久しぶりの休暇返上で、祥の失恋の愚痴に付き合わされてるんだから」 「まーた別れたのか。何人目だよ」 「知らないわ。失恋した~っていうから話聞いてあげるとね、明らかに振り回して我儘放題してるのは祥の方なんだもん。ほんと呆れるわ。今に誰かに刺されるわよね、あの子」 「まあ、痛い目に遭ってからじゃねえと懲りねえだろうな」 里沙は苦笑しながら首を竦め、財布を取り出して暁に目配せした。そういえば、何も注文しないでこっちまで来てしまったのだ。暁は里沙を手で制して 「いいぜ。俺が買ってくる。コーヒーでいいか?」 「一緒に行くわ。祥、雅紀くん、何飲みたい?」 「あ。俺はコーヒーゼリーフラペチーノ。雅紀くん、何がいい?」 「あ、えっと……」 「俺と同じのにしなよ。期間限定。すっごく美味しいから」 「あ、はい、じゃあ俺も」 すっかり祥悟のペースになってる雅紀に、暁は不安そうな顔をしたが、祥悟は艶然と暁に微笑んで、早く行けと言わんばかりに、しっしっと手を振ってみせる。 ……このやろ。調子に乗りやがってっ また突っかかっていきそうな暁の腕を、里沙は苦笑しながら掴んで引っ張り 「雅紀くん、ごめん。ちょっと暁、借りるわね。飲み物買ったらすぐ戻るから待ってて。祥、雅紀くんを苛めないでよ」 「苛めるわけないでしょ。俺たち、お友だちだもの。ね~雅紀」 祥悟に腕を掴まれて、雅紀は焦った表情で、きょときょとと、俺と祥悟の顔を見比べている。暁は雅紀ににかっと笑って 「すぐ戻るからな。祥に何かされたら、得意の蹴り、入れてやれよ」 雅紀は眉を八の字にして、こくこくこくと頷いた。 暁は、フラペチーノ2つとアイスコーヒー2つを注文して、財布を出そうとする里沙を制して会計を済ませると、出来上がりを待つ間、レジ近くのスタンド席に腰をおろした。 「で。あいつ、今度は何を企んでるんだ?」

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!