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番外編『愛すべき贈り物』11
俺が里沙の素性を知ったのは、出会ってから3ヵ月ほど過ぎた頃だった。そこそこメジャーなメンズ雑誌に、里沙によく似たモデルが載っているのを見て、俺が「こいつ、里沙に似てるな」と言うと、里沙は笑いながら「ああ、それ、双子の弟だから」とあっさり認めた。
里沙が弟と同じモデルで、10代の頃は双子の姉弟モデルとして、結構テレビや雑誌で話題になったりしていたことを知っても、俺は特に付き合い方を変える気はなかった。時々、どちらかが連絡をして、都合が合えば、会って食事して寝る。
俺の素性については、記憶を失くしていることと、探偵の仕事をしていること。里沙に話したのはそれくらいで、里沙も特に詮索してこなかった。そういう程よい距離感が、お互いに気に入っていたし、気が楽だったのだ。
「なんつーかさ。あの頃の俺ってマジでサイテーだったよな」
暁はほろ苦い気分で、自嘲気味に呟いた。里沙はくすくす笑いながら
「サイテーだったって自覚あるだけいいんじゃない? 私も同類だわ」
暁は、里沙の隣にいってしまった雅紀の顔色を、そおっとうかがった。恋人の昔の素行の悪さなんて、聞きたくはないだろう。きっと嫌な気持ちになってるだろうな。そう思って向けた視線が、ばっちり絡み合う。
……っ
雅紀は気遣わしげな表情で、暁を見つめていた。嫌悪とか軽蔑とか、そういう色はまったくない。ただただ心配そうに少し眉をさげて、暁をじっと見守っている。
「俺、今、そんなにひでえ顔、してた?」
雅紀は瞳を揺らし、こくんと頷いた。
暁は里沙の隣にいってしまった雅紀を、ちょいちょいと手招きした。雅紀はちらっと里沙の方を見てから、無言で首を横に振った。
「は? なんでだよ~。いいからこっち来いって。俺、ひでえ顔してんだろ?だったら癒してくれよ」
「ダメです。暁さん、変なことするでしょ」
「おいこら。おまっ、人を変態みたいに言うなっ」
2人のやり取りに、里沙がくすくす笑い出した。
「暁。あなた、全然信用ないわね。もう……ほんとに仲いいんだから。ご馳走さま」
里沙はそう言った後で、赤くなっている雅紀の方をじっと見つめて
「ところで、どちらが先に、好きになったの?」
「えっ、えーと……」
雅紀は火照る頬を手の甲で押さえて首を傾げた。
……どうだったんだろう。彼を秋音として考えたら、もちろん好きになったのは雅紀が先だ。なにしろもう10年近く前から想い続けた初恋の人なのだから。でも、里沙が聞いているのは、多分そういう意味じゃない。
「多分、俺の方だな」
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