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番外編『愛すべき贈り物』16

遠くを見つめて、何かしきりに考え込んでしまった雅紀を、祥悟はしばらく黙って見つめていた。 暁に猫可愛がりに愛されて、ちやほやされて、有頂天になっていると思ったら、どうやら違うらしい。よくは分からないけど、どうもいろいろと訳ありのようだし、本当に調子が狂う。 ……これはちょっと、計画変更かな。変な小細工するより、この子の不安定さをつつけば、案外簡単なのかも。 「ねえ、雅紀。君は暁くんに愛されてる自信ないんだよね?」 祥悟は頬杖をついて、雅紀の顔を覗き込んだ。雅紀は瞳を揺らして、不安気に見つめ返してくる。反論も肯定もしないけど、ここで黙っちゃうってことは、認めているわけか。 「じゃあさ、ちょっと試してみない?暁くんが本当に君のこと、これから先ずっと愛していけるのか。それとも、やっぱり里沙みたいな女の方がいいのかどうか」 祥悟の言葉に、雅紀はぎゅっと口を引き結び、怒ったような顔になって首を横に振った。 「嫌なの?どうして?自信ない?」 「そういう、ことじゃなくて。俺、暁さんの気持ち、試すとか、そんな失礼なことはしないです」 ……へえ。めっちゃ不安そうな顔してたくせに、こういうとこは頑固なんだ。意外……。 「そっか。試すって言い方が誤解させちゃったのかな?じゃあさ、こう考えてみたらどう?変なしがらみ抜きで、暁くんにほんとの相手を選ばせてあげるってさ」 祥悟の言葉に、雅紀は大きな目を揺らめかせて首を傾げた。 「……ほんとの……相手?」 「そ。暁くんは君と違ってゲイじゃない。君とはいろいろあったみたいだから、優しい暁くんは今、君に夢中だ。でもさ、恋愛の初めなんて、みんなバカになって浮かれてる。そういうの、ずっと続くって思うのは幻想だよね。最初は優しかった相手が、どんどん変わっていく。そういう経験、君にだってあるんじゃない?」 雅紀はぎくっとしたような顔になり、手元のワイングラスを握り締めた。 自分の過去を、暁が不用意に祥悟に話すはずはないから、きっと彼は何も知らずに言ってるだけだ。 でも、確かにその通りなのだ。初めてを捧げた高校の時の先生。大学時代に付き合った彼。そして……桐島貴弘さん。 みんな最初はものすごく優しかったし、包み込むように愛してくれた。でも……どんどん変わっていって、結局はみんな……。

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