469 / 605
番外編『愛すべき贈り物』18
「悪いな。すっかり遅くなっちまった」
暁がそう言ってテーブル席に近づいてくると、祥悟は不貞腐れたように、ぷいっとそっぽを向いた。雅紀はそんな祥悟をちらっと睨んでから目を伏せる。
2人の間に漂う微妙な空気に、暁は首を傾げて、雅紀の隣にどかっと腰をおろすと
「寂しかったか~? 雅紀。ごめんな、1人にさしてさ」
そう言って、手を伸ばして雅紀の髪をわしわししようとしたら……かわされた。
「おい。な~んで逃げんだよ」
雅紀は恨めしそうに暁をちろっと見て、また目を伏せた。
「いや、1人じゃないから。俺がず~っと一緒だったし」
4人掛けのテーブルの、端と端に離れて座る2人。どうやら会話は弾んでいなかったらしい。祥悟のあの不貞腐れた顔は、雅紀に相手にされなかったせいか。
……ま。うちの仔猫ちゃんは人見知りだかんな。祥と2人っきりとか、絶対無理だろ。
暁は内心苦笑すると、
「な~にブスくれてんだよ? 祥。あ、そっか。おまえも俺がいなくて寂しかったわけな~」
「は? 誰が。別に、もっと遅れてきてくれてよかったんだけど?せっかく雅紀と2人きりで楽しく過ごしてたのにさ」
……や。全っ然、楽しそうじゃねえけどな、おまえら。
暁は心の中で突っ込みを入れて、笑いを噛み殺すと
「里沙、急に来れなくなったんだってな。何。仕事か?」
「さあ? 知らない。デートなんじゃないの?」
暁はメニューを見ながら、店員に合図して
「へえ……デートね。里沙、新しい恋人出来たんだ?……あ、俺、これとこれね。おまえらはもう何か頼んだのか?」
「ううん。ワインとツマミだけ。暁くん待ってたから、お腹ペコペコ」
祥悟はメニューを覗き込むと、
「雅紀はどうする? 俺のオススメはこれとこれね」
「あ……じゃあ、俺、それでいいです」
店員を呼んで、3人分のオーダーを済ませると、暁はほっとした顔で、雅紀に擦り寄った。
「あ~。ようやく雅紀を補給出来るぜ。あの鬼社長、人使い荒過ぎだっつーの」
雅紀は肩にすりすりしてくる暁を、赤い顔で睨みつけた。
「暁さん。人前です」
「んなつれないこと言うなって。こうしてる時がさ、1日で一番ほっと出来るんだぜ~」
雅紀はちろっと祥悟を見た。祥悟はぶすっとした顔で雅紀を睨みつけてから、大袈裟にため息をついて
「暁くん、顔がデレっデレ。イケメンが台無しだね~」
「お? おま、俺のことイケメンとか、思ってねえだろ」
「思ってるよ。俺、今でも暁くんに惚れてるし?」
祥悟の意外な言葉に、暁は一瞬呆気に取られたような顔になり、雅紀から離れると
「ばっ。おま、何言ってんの?!」
「酷いな。暁くん、忘れちゃった? あの夜のこと」
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!




