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番外編『愛すべき贈り物』18

「悪いな。すっかり遅くなっちまった」 暁がそう言ってテーブル席に近づいてくると、祥悟は不貞腐れたように、ぷいっとそっぽを向いた。雅紀はそんな祥悟をちらっと睨んでから目を伏せる。 2人の間に漂う微妙な空気に、暁は首を傾げて、雅紀の隣にどかっと腰をおろすと 「寂しかったか~? 雅紀。ごめんな、1人にさしてさ」 そう言って、手を伸ばして雅紀の髪をわしわししようとしたら……かわされた。 「おい。な~んで逃げんだよ」 雅紀は恨めしそうに暁をちろっと見て、また目を伏せた。 「いや、1人じゃないから。俺がず~っと一緒だったし」 4人掛けのテーブルの、端と端に離れて座る2人。どうやら会話は弾んでいなかったらしい。祥悟のあの不貞腐れた顔は、雅紀に相手にされなかったせいか。 ……ま。うちの仔猫ちゃんは人見知りだかんな。祥と2人っきりとか、絶対無理だろ。 暁は内心苦笑すると、 「な~にブスくれてんだよ? 祥。あ、そっか。おまえも俺がいなくて寂しかったわけな~」 「は? 誰が。別に、もっと遅れてきてくれてよかったんだけど?せっかく雅紀と2人きりで楽しく過ごしてたのにさ」 ……や。全っ然、楽しそうじゃねえけどな、おまえら。 暁は心の中で突っ込みを入れて、笑いを噛み殺すと 「里沙、急に来れなくなったんだってな。何。仕事か?」 「さあ? 知らない。デートなんじゃないの?」 暁はメニューを見ながら、店員に合図して 「へえ……デートね。里沙、新しい恋人出来たんだ?……あ、俺、これとこれね。おまえらはもう何か頼んだのか?」 「ううん。ワインとツマミだけ。暁くん待ってたから、お腹ペコペコ」 祥悟はメニューを覗き込むと、 「雅紀はどうする? 俺のオススメはこれとこれね」 「あ……じゃあ、俺、それでいいです」 店員を呼んで、3人分のオーダーを済ませると、暁はほっとした顔で、雅紀に擦り寄った。 「あ~。ようやく雅紀を補給出来るぜ。あの鬼社長、人使い荒過ぎだっつーの」 雅紀は肩にすりすりしてくる暁を、赤い顔で睨みつけた。 「暁さん。人前です」 「んなつれないこと言うなって。こうしてる時がさ、1日で一番ほっと出来るんだぜ~」 雅紀はちろっと祥悟を見た。祥悟はぶすっとした顔で雅紀を睨みつけてから、大袈裟にため息をついて 「暁くん、顔がデレっデレ。イケメンが台無しだね~」 「お? おま、俺のことイケメンとか、思ってねえだろ」 「思ってるよ。俺、今でも暁くんに惚れてるし?」 祥悟の意外な言葉に、暁は一瞬呆気に取られたような顔になり、雅紀から離れると 「ばっ。おま、何言ってんの?!」 「酷いな。暁くん、忘れちゃった? あの夜のこと」

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