470 / 605
番外編『愛すべき贈り物』19
祥悟の思わせぶりな発言に、暁は焦ったように隣の雅紀に首を振ってみせ
「おまえね。誤解されるような発言、やめろって。あの夜もなんも、あれは」
「暁くん、あの時言ってくれたよね? おまえが男じゃなかったら、俺おまえのこと好きになってたかもなって」
「~~~っ」
暁は目を見開き、口をぱくぱくさせて、傍らの雅紀を恐る恐る見た。雅紀は目を丸くして祥悟を見た後、隣の暁を、ちろっと上目遣いに見上げる。
……うわぁ…何そのつぶらな瞳。くっそ~可愛いぜっ……じゃなくて、何その不信の眼差しっ。
暁は顔を引き攣らせて、雅紀に微笑むと
「祥の言うことなんか、真に受けんなよ。あれは」
「え。じゃあ、やっぱりその場しのぎの嘘だったんだ……。酷いな、暁くん……」
……うわ。おまっ。なんなの?その無駄に上手い演技力は。
「いやいやいや、待て、祥。あれはおまえが女装、」
「雅紀。だから言ったでしょ。こんな誠実じゃない男、止めといた方がいいよ。ね、いっそ俺と付き合わない? 俺、基本は受けだけど、君みたいな可愛い仔猫ちゃん相手なら、攻めもいけるよ?」
祥悟の誘いに雅紀は暁から視線を移し、何故か顔を赤くした。
……おいこら。何言っちゃってんだよ、祥悟。つか、なんでそこで顔真っ赤にしてんだよ、雅紀
「おまえな、なーにが基本は受けだよ。ノンケだろーが」
「だって……暁くんだって、ノンケだから俺とは付き合えないって言ってたくせに、ちゃっかり男の恋人作ってんじゃん」
「やっ。それとこれとは」
「ね? 雅紀。俺といっぺん寝てみよっか? 暁くんより相性いいかもしれないし? さっきだってキス…」
「うっわぁあああ」
唐突に雅紀が叫んだ。暁が驚いて雅紀の顔を見ると、耳まで真っ赤になってあわあわしている。
「ど、どーした? なんつー声出してんだよ」
「ごっごめんなさいっ」
雅紀は両手で自分の口を塞いで、恨めしそうに祥悟を睨みつける。祥悟は平然とした顔で微笑んで、
「ね、雅紀。さっき言ったこと、よーく考えてみてね。返事は急がないから」
「や。俺、そんなのっ」
反論しようとする雅紀に、祥悟は意味ありげにウィンクすると
「あ。料理きたよ。さ、食べよ食べよ。今日は暁くんの奢りだからね。他にも食べたいものあったら、じゃんじゃん追加しちゃっていいよ」
「おいこら、祥。だ~れが奢るっつったんだよ。おまえの方が稼いでんだろが」
「えー。暁くん、ケチになったよね。あの夜はぜんぶ奢ってくれたじゃん。ホテル代も」
「ばっ。だから~おまっ、余計なこと言ってんなっつの」
「んっふふ。もう、照れちゃって。暁くん、可愛いなぁ」
ぎゃいぎゃい言ってる暁の横で、雅紀は頬を手で押さえて、そっとため息をついた。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!




