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番外編『愛すべき贈り物』24

「うわぁ……。今、暁くんが何考えてるか、俺分かっちゃった。君ってそんな分かり易い男だった?」 暁が雅紀のことを思い浮かべてにデレデレしていると、祥悟は嫌そうに顔を歪めて身をひいた。 「は? 何だよその嫌そうな顔。俺は元からこんなヤツだっつーの。それより祥。里沙と雅紀、まーだ終わんねえのかよ」 「ん~? そろそろなんじゃない?」 ソファーに座り直し、すっとぼけた顔で煙草をふかす祥悟を、暁は睨みつけた。 「あのな。俺に内緒で、あいつら何こそこそやってんだよ? おまえ知ってんだろ? いい加減ネタバレしろって」 「え~。人聞き悪いよね。別に、こそこそなんかしてないけど?」 「や。だっておかしーだろ。こないだからもう何回も、雅紀呼び出して会ってんじゃん、里沙のやつ」 祥悟は暁をまじまじと見て 「だから、それ、俺に聞いたって仕方なくない? 聞くなら里沙か雅紀本人に聞けば? 約束して何回も会ってんの、俺じゃないんだから」 祥悟の言葉に、暁はうっと言葉を詰まらせた。 「……う……まあ。そりゃそうなんだけどさ」 「里沙が仕事のことで、何か雅紀に協力頼んでるってしか、俺は聞いてないよ」 「や。俺もそれは知ってるさ。でも何回聞いても、それ以上は口割らねえんだよ、あいつ」 祥悟ははあっとため息をついて 「暁くん、君って意外と束縛タイプ? そういうの、度が過ぎると嫌われちゃうよ」 「っ。ち、ちげえよ」 祥悟に指摘されて、暁はちょっとどきっとした。 ……そうだ。雅紀の過去の男たちは、病的な束縛タイプだった。元カレも貴弘も。俺があいつらと同じなわけないだろうが。でも…確かに何回か、雅紀に対する自分の独占欲の強さを思い知らされた時があった。 そうだよな……。雅紀にだって俺以外にも人付き合いってもんがあるわけだしな。人見知りなあいつが、里沙には珍しく心許してる。それは悪いことじゃねえんだ。だって俺は……いずれ消えちまうわけだしな……。 雅紀には、信頼出来る知人友人を、出来るだけ多くしてやりたい。事務所の田澤や他の連中もそうだし、仙台の藤堂も、父親である桐島大胡もその1人だ。 自分が消えた後も、秋音はずっと雅紀を守っていくだろうし、自分も秋音の中で雅紀を見守り続けるつもりだ。でも、万が一の時、ある程度事情を知っていて、雅紀が気軽に相談出来る相手がいるのは心強い。 特に年が近くて、苦労もしてきている里沙と祥悟は、雅紀の悩み事のよい相談相手になってくれるだろう。そういう人脈を広げておくことは、雅紀にとって決して悪いことではないんだ。

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