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番外編『愛すべき贈り物』25

「なあ、こういう時、あんま詮索するのって、うざいよな?」 「うーん。内容にもよると思うけど?雅紀はゲイなんだから、この先、里沙と間違ってもどうこうなったりはしないでしょ。友人関係なら、必要以上に詮索されたり干渉されるのは、俺だったらやっぱ嫌かな」 「だよなぁ……」 いろんな問題が解決に向かって、秋音と3人で穏やかに日々を重ね、出会ってから今、一番幸せな時を過ごしている。 雅紀との暮らしは想像以上に心地いい。共に過ごす時間が増えれば増えるほど、愛おしさは増している。こんな満ち足りた気持ちになれるパートナーと、出会えた自分は本当に幸せ者だ。 ただ、だからこそ、雅紀との距離感について、暁は少し悩んでいた。雅紀は、心にいろいろな傷を抱えているとはいえ、庇護してやらなければいけない子供ではない。過保護に守りすぎてしまうのでは、この先ずっと共に生きていく相手として、彼の自立性を尊重していないことになる。 お互い自立した大人同士、対等な立ち位置で適度な距離を保つ。頭では分かっていても、自分が雅紀に対して、ちょっと過剰に構いたがりで、好き過ぎる傾向があって、どう距離を保てばいいのか分からない時があるのだ。 今回のことも、雅紀が里沙と変なことになると、本気で疑っている訳じゃない。でも気になって仕方ないのだ。雅紀が、自分の知らない時間を、他の人間と共有しているのが面白くない。雅紀のことを何でも知っておきたいという気持ちが、むくむくと湧いてきて、どうにもこうにも落ち着かない。 ー過保護ママかよ、俺は。 暁は煙草を咥えて、マッチで火をつけた。情けない自分に対するやるせなさを、煙ともにふぅっと吐き出す。 「君って結構病んでるねぇ。そんなに気になるならさ、雅紀じゃなくて、里沙に直接聞いてみれば?」 「あ?」 「こないだ言ったでしょ。里沙につきまとってる、ちょっとストッカーちっくな男がいるって話。俺が前に文句言ってさ、しばらくはおさまってたんだけど、また始まったんだよね」 暁は眉を顰めた。 「つきまとわれてんのか?」 「ううん。いまのとこはまだ。ただ、里沙がやってるSNSのコメント欄が荒らされたんだよね。匿名だけど、多分その男。里沙はあんまり気にしてないみたいだけど、俺はヤバいんじゃないかなって思ってる」 暁は吸いかけの煙草を灰皿で揉み消した。 「確かに、よくねえな、それ」 「でしょ。もう現役じゃないんだから、あんまり大袈裟にしたくないって里沙は言ってるけど、最近変な事件も多いしさ。用心に越したことないと思うんだよね。そこで、君の出番」 「なるほどな。仕事の依頼ってんなら、相談に乗るぜ」 「さすが暁くん、話が早くて助かるなぁ。じゃ、依頼、引き受けてくれる?もちろん、正式に君の事務所通すからね。費用は俺持ちで」

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