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番外編『愛すべき贈り物』26

「なあなあ、今日は何時頃帰るんだよ?」 「んー。まだ分かりません。里沙さんの予定次第だし」 「そっか。な?雅紀。今日は俺、デスクワーク残ってるだけだしさ。そっちの付き添いも、一緒に行ってやろうか?」 暁の言葉に、雅紀はかじりついていたパソコンから、ひょいっと顔をあげた。大きな瞳がきょとんと自分を見上げる。 ……くぅ~可愛いぜっ。その悩殺上目遣い。 最近、雅紀は里沙の付き合いで、エステに通ってる。祥悟に依頼された里沙の身辺調査と護衛をする為なのだが、里沙に誘われてお試しコースに入会したらしい。週2回のエステ通いで、もともと色白で綺麗だった肌はつやつや。髪型も里沙の仕事仲間に紹介された店でカットしてもらって、美人ぶりにいっそう磨きがかかっている。 もう、食べちゃいたいくらいの可愛さなのだ。 自分を見下ろして、にやにやしている暁に、雅紀は嫌そうに顔を顰めた。 「暁さん。今何考えてます?顔がふにゃふにゃです」 「おい。ふにゃふにゃって何だよ。もっちろん、おまえのこと考えてるに決まってんだろ~」 ますますでれでれと締まりの無い顔をする暁に、雅紀は不信の眼差しを向けながら 「一緒にって。暁さんも料理教室に来るんですか?」 「あ~……。そっか。今日は料理教室の日か」 途端に暁の表情が曇った。前に1度、里沙の付き添いで料理教室に行った時、生徒のおば様たちに囲まれて大変な思いをしたのだ。その時のことを思い出したのだろう。暁はげんなりとした顔になり 「んー。やっぱ無理だな。俺、そっちはパスするわ」 「ですよね。先生も言ってましたよ。みんな上の空で仕事になんないから、暁さんは連れて来るなって」 くすくす笑う雅紀に、暁は口を尖らせながら、隣のデスクから椅子を引き寄せて、雅紀の横に座った。 「にしても里沙のやつ、ひょっとして今カレと結婚秒読みか?エステだ料理教室だって、まるで花嫁修業みてえだよなぁ」 ……わ。さすが暁さん。鋭い。 デスクのペン立てからペンを1本取って、手でくるくる回している暁の横顔を、雅紀はちょっとどきっとして見つめた。 「……気に……なります?里沙さんの今の彼氏のこと」 「ん~?まあな。今カレ紹介しろっつってんのに、あいつ俺には全然口を割らねえしさ。隠されると、余計に気になっちまうじゃん?」 雅紀は探るように暁の顔を無言で見つめた。 祥悟に頼まれて(……というか半ば脅迫されて)、里沙と暁が、なるべく2人の時間を持てるように、雅紀も協力している。

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