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番外編『愛すべき贈り物』27

もちろん、本心では2人の仲が深まっていくのが平気なわけじゃない。ただ、雅紀としては、やはり暁の本当の気持ちを優先して欲しいのだ。暁の中にほんの少しでも、里沙に対する特別な思いがあるのなら、2人できちんと話す時間を持って欲しい。お互いに思いをぶつけ合って、その結果、暁が里沙を選んでも自分を選んでも、その選択を自分は尊重したい。 ……ううん。違う。俺は怖いんだ。暁さんが俺との人生をこのまま歩んで、数年先、あるいはもっと先に、後悔する日が来るかもしれないって。 暁が自分を選ぶということは、単に恋人に好きな人を選ぶということとは違う。そこが男女の恋愛とは、決定的に違うのだ。 自分はいい。もともと同性しか愛せないのだから、自ずと選べる未来は限られている。 でも暁は違う。女性を愛せる暁が、ゲイである自分を選ぶということは、自分と同じ未来しか選択出来ないということだ。彼の資質と才能を受け継ぐ子供を、彼は自分の腕に抱く機会を永遠に失うということなのだ。そのことを考える時、雅紀の脳裏に浮かぶのは、暁が昔撮った1枚の写真。 温かい光に包まれた海で、赤ん坊を抱く女性。記憶を失っていたはずの彼が、あのワンシーンにどんな思いを込めてシャッターをきったのか。 暁に直接、そのことを聞く勇気はない。多分聞いても、暁は自分に気を遣って、本心を言わない気がする。 だから……里沙の思いを知った上で、今選ぼうとしている人生最大の分岐点の意味を、もう1度暁にじっくり考えてもらいたい。 ……狡い……よな。俺。 こんなやり方、暁さんは嫌いだと思う。こんな、試すみたいなやり方。暁さんの気持ちを疑ってなんかいない。そう言いながら、やっぱり俺は、不安でどうしようもないんだ。 それだけ愛されてるのに、どうして自信が持てないんだと祥悟さんは言ってた。 自分に自信なんて……持てるわけない。 打ち消しても打ち消しても、消えない自分の過去。 同性で、しかも傷物である自分を、大切な暁に慈しんでもらっているという事実。 こんな考え方自体、暁はきっと嫌いだし、俺がこんなこと考えてるって知ったら、ものすごく怒ると思う。わかっていても、どうしても俺は……。 「こーら。雅紀」 不意に頭をぽんぽんっと軽く叩かれた。すっかり物思いに沈んでいた雅紀は、はっとして暁の顔を見た。 「おまえね。まーた何か、1人で煮詰まってんだろ~。顔見りゃ分かるぜ」

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