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十六夜のつき4※

暁の手が、雅紀のものに触れ、優しく包むように握り込んでくる。 「んあっ……っあぁん」 いきなり直に触れられて、雅紀は仰け反って、掠れた悲鳴をあげた。 暁はつき出された乳首を、むしゃぶるように吸い上げ、舌でなぶり、軽く甘噛みする。 言葉にならない声で鳴きながら、びくびくと雅紀の身体が跳ねた。 雅紀のものは、既に先走りで濡れていた。親指で先っぽのぬめりを塗りひろげながら、ゆったりと包んだ手を優しく動かした。 「雅紀……気持ちいい?……な……これいいか?」 胸から顔をあげ、耳元で囁く暁の声も、興奮で掠れていた。 「あぁ……あっん……やあっあっあっ」 ゆっくり上下にしごく度に、先走りが溢れて暁の手を濡らし、くちゅくちゅといやらしい音をたてる。 暁は、自分のスウェットと下着をずり下げ、勢いよく飛び出した自分のものを、雅紀の太ももに押しつけた。 自分の愛撫に応える雅紀の反応が良すぎて、目眩のしそうな興奮を抑えきれない。 「……雅紀……俺のも触って。……な?」 服にしがみついている雅紀の手を引き剥がし、自分のものに触れさせる。 雅紀は一瞬躊躇うように手を引っ込めかけたが、すぐにおずおずと指を絡ませてきた。 「くっ…」 自分で触らせたくせに、思わずびくっとして声が出た。ためらいながらも絡みついてくる、雅紀の細い指の感触が、もどかしいのに興奮を煽る。 手の動きを速めると、雅紀はせつなげに喘ぎ、身をよじりながら、暁のものをぎゅっと握りしめてくる。 目尻に涙を溜め、うっすらと唇を開き、恍惚とした表情を浮かべる雅紀は、おそろしくエロティックで綺麗だった。 雅紀のこんな表情を、もしかしたら桐島も見ているのかもしれない。 ふとそんな考えが頭をよぎった。 こみ上げてきた強烈な妬心が、じりじりと胸の奥を焦がす。 唐突に動きを止め、手を放した暁に、雅紀は少し我に返った様子で、不安気に暁の顔を見上げた。 ……俺のもんだから、おまえ そう心の中で呟くと、上体を起こし、雅紀のものに自分のものをぐいっと押しつけ 「雅紀、一緒に気持ちよくなろう、な」 2本まとめて握りなおし扱きだす。 「あき……らさ……っああっ……ん、ん、んぅ」 2人分の熱が、重なり合い融けてゆく。 雅紀は身体をうねらせ、シーツを掴みしめた。 ……うっ……すげっ……いいっ 暁は痺れるような快感につき動かされるように、手の動きを速めた。両手で包み、互いのものを擦り合わせながら、高みを目指す。 「んぁっあ……ダメっ……あっ……やっイク……っ」 雅紀が切迫つまった鳴き声をあげた。 「いいよイって。俺もイキそう」 「ダメっ……ダメぇっああっ……あああっっ…」 たえいるような声をあげ、雅紀の身体が弓なりに反った。 雅紀の熱い迸りが、自分の指を濡らすのを感じて、暁も自分の熱を解き放った。 暁はイった後の気だるい身体を起こして、放心してくったりしている雅紀の顔に、そっと優しいキスを降らせた。 愛おしさがとまらない。 可愛くて可愛くて、仕方がない。 ちょっと強引だったことは否めないが、及んだ行為に後悔はなかった。雅紀も本気で嫌がってはいなかった…そう思いたい。 男の雅紀の身体を愛撫することに、何の抵抗も感じなかった自分に、少し驚いたが、むしろ嬉しかった。 ……っていうか、何だよあれ …あの強烈な快感。 ……女抱いてる時に俺、あんなに興奮したことないぞ。 頭ん中、マジで沸騰しそうだった。 抵抗がないどころか……俺…… イった後の惚けた自分の顔に、暁が優しいキスの嵐を降らせてくる。 愛おしくて堪らないのに、すごく不安だった。 暁が何故、男の自分に、こんな行為を仕掛けてくるのか、その真意がわからない。 抱きしめたり、キスぐらいならまだ、暁流の過剰なスキンシップの延長だと思えた。 でも、膨らみのない自分の胸への愛撫や、男である証に触れる行為は、まったく別次元のはずだ。 ……暁さんも俺のこと……好き……なのかな……。や、好きっていうのはそういう好きじゃなくて、つまりああいうことしてもいい好きってことで… 混乱する頭の中で、でもはっきり分かったことが、ひとつある。 暁に触れられても、先日の桐島の時のようなパニックは起きなかった。 ノンケなはずの暁への不安はあっても、昔のトラウマを呼び醒ますような、恐怖や嫌悪は少しも感じない。 ……気持ち良すぎて、頭どうにかなっちゃいそうだった… あんな快感……今まで経験したことないかも…… 暁さん……だから…? 暁さんを……好きだから……? でも……暁さんは…… 暁さんは……俺のこと……

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