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番外編『愛すべき贈り物』38

「俺の心配とか別にいいから。それよりさ。雅紀に聞いたよ。君たちの馴れ初め。こっちではナンパだったけど、もともと東北の大学で、先輩後輩だったんだって?」 「んあー? まあな。つーかさ。雅紀、おまえにそんな話までしてんだ?」 「うん。あの子素直だからね。でさ。君ってたしか記憶失くしてたんだよね。こっちで雅紀に会った時、もちろん昔の知り合いだって、気づいてなかったんでしょ?」 「ああ……まあな。雅紀の方は、俺見てびっくりしてたみたいだけどさ、俺はまるっきり分からなかったぜ」 「それで、どうして雅紀をナンパしたわけ?あの子、綺麗だけど女の子には見えないでしょ。ひと目見て、何か感じたの?こいつのこと、俺は知ってるかもしれない、みたいな」 「ん~? わっかんねえよ。んなこと。まあ、多少は昔の記憶みたいなのが影響してたんじゃねーの?ただ、俺的にはひとめ惚れってヤツだったと思ってるけどな」 「ノンケの君が、男の雅紀に会って、いきなりひとめ惚れ、ねえ……」 納得いかない様子の祥悟の横で、暁はその時のことを思い出しているのだろう。ちょっと遠い目をして、へらっと笑うと 「あいつさぁ。とびきりの美人さんだろ? しかも目とかクリっクリで可愛くてさ。俺見て涙目になってて、それがまたすっげー印象的でさ。放っておけなくて、俺、無意識に構い倒してたんだわ。あれはやっぱ運命の出逢いってヤツなんだよなぁ。男かどうかなんて関係ねえし」 暁のデレデレ顔に、祥悟は嫌そうに顔を顰めた。 「いや。普通、相手が異性か同性かって、かなり重要な要素だから。要するに暁くんは、節操無しってことなんだね」 「おいこら。節操無し言うな。ま。俺がむかし遊び人だったことは否定しねえよ。でももうすっかり改心したんだよ。これからは雅紀一筋な」 「でもさ、暁くん。同情と愛情は違うよ」 祥悟の一言に、暁はす……っと表情を引き締めた。 「……それ、どういう意味だよ?」 「雅紀の過去って、いろいろ訳ありなんでしょ」 暁の顔が険しくなる。 「……どこで聞いた?」 いくら雅紀が素直でも、そんなことまで自分から祥悟に話したとは思えない。 「はっきり聞いた訳じゃないよ。ただ何となくそう思っただけ。俺の勘、やっぱり当たってた?」 暁は眉間にシワを寄せて 「当たってねえよ。おまえ、そういうのさ、当てずっぽうに適当なこと言うのやめろ。すっげー感じ悪いぜ」 暁は不機嫌そのものの低い声でそう言うと、祥悟を睨みつけた。祥悟は悪びれた様子もなく肩を竦めて 「俺の周りって、訳あり過去持ちの子、結構多いからね。雅紀と話してて、なんとなく分かっちゃったんだよね」

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