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番外編『愛すべき贈り物』46

「それにしても、本当に綺麗な目だね、雅紀。それに、最近ますます君は美しくなったな。恋をすると綺麗になるのは、女の子だけの特権じゃないんだね。本当に眩しいくらいだ」 「こら~。めっちゃ厨二病ちっくなセリフ吐いて、可愛い雅紀くんを泣かせたわねっ」 「っ痛っっ」 突然、声とともに、古島の頭にファイルが降ってきた。 びっくりして見上げた先には、怒りモードの桜さんがいて。 「古島くんっ。早瀬くんの留守狙って、どさくさで雅紀くん、口説いてんじゃないわよ~」 古島は叩かれた頭を押さえて 「ちょっと待って、桜さん。誤解誤解。というか、厨二病ちっくってどういう意味ですか。だいたい、僕の話、聞いてたんなら分かるでしょ? 口説いたりなんかしてないって」 言い訳する古島を無視して、桜さんは2人の間に割って入ると 「雅紀くん。騙されちゃダメよぉ。キザなこと言っていい人ぶってるけど、この人、下心ありありなんだからね。さ、お姉さんと一緒にあっち行きましょ。また美味しいジュース作ったげるわ」 「え……あの……桜さん……」 雅紀は驚いて涙が引っ込んだらしい。桜さんと古島の顔を見比べて、間に入ろうとおろおろしている。 「うっわぁ。酷いなぁ。下心なんかないってのに。それ、あるのはむしろ桜さんの方」 「おだまり。遊んでる暇があるなら、経費の申請書早く作んなさい。でないと、溜めてる先々週分、全部自費になるわよ」 桜さんにビシっと遮られ、古島は首を竦めて立ち上がった。 「すっげー横暴。それって職権乱用だと思うんだけどな」 「何か言った?」 まだぶつくさ言ってる古島を、桜さんがキッと睨み付ける。古島はため息をついて、渋々自分のデスクに戻って行った。 「あの。桜さん。古島さん、悪くないです。俺が悩んでたから励ましてくれただけで」 雅紀が恐る恐るそう言うと、桜さんは鬼の形相から、急に優しい笑顔になって 「大丈夫よ、雅紀くん。ちゃんと分かってるわ。それより、ボスが貴方をお呼びなの。洗面所で顔、洗ってらっしゃいな」 桜さんの言葉に、雅紀は首を傾げた。 「田澤さんが……俺を?」 「そ。早瀬くんからね、ボスに直接、連絡が来たみたいなの」 雅紀ははっと息を飲んだ。 「っもしかして、何かトラブルですか?」 「詳しいことはボスが話してくれるわ。さ、急いで急いで」 「はいっ」

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