497 / 605
番外編『愛すべき贈り物』46
「それにしても、本当に綺麗な目だね、雅紀。それに、最近ますます君は美しくなったな。恋をすると綺麗になるのは、女の子だけの特権じゃないんだね。本当に眩しいくらいだ」
「こら~。めっちゃ厨二病ちっくなセリフ吐いて、可愛い雅紀くんを泣かせたわねっ」
「っ痛っっ」
突然、声とともに、古島の頭にファイルが降ってきた。
びっくりして見上げた先には、怒りモードの桜さんがいて。
「古島くんっ。早瀬くんの留守狙って、どさくさで雅紀くん、口説いてんじゃないわよ~」
古島は叩かれた頭を押さえて
「ちょっと待って、桜さん。誤解誤解。というか、厨二病ちっくってどういう意味ですか。だいたい、僕の話、聞いてたんなら分かるでしょ? 口説いたりなんかしてないって」
言い訳する古島を無視して、桜さんは2人の間に割って入ると
「雅紀くん。騙されちゃダメよぉ。キザなこと言っていい人ぶってるけど、この人、下心ありありなんだからね。さ、お姉さんと一緒にあっち行きましょ。また美味しいジュース作ったげるわ」
「え……あの……桜さん……」
雅紀は驚いて涙が引っ込んだらしい。桜さんと古島の顔を見比べて、間に入ろうとおろおろしている。
「うっわぁ。酷いなぁ。下心なんかないってのに。それ、あるのはむしろ桜さんの方」
「おだまり。遊んでる暇があるなら、経費の申請書早く作んなさい。でないと、溜めてる先々週分、全部自費になるわよ」
桜さんにビシっと遮られ、古島は首を竦めて立ち上がった。
「すっげー横暴。それって職権乱用だと思うんだけどな」
「何か言った?」
まだぶつくさ言ってる古島を、桜さんがキッと睨み付ける。古島はため息をついて、渋々自分のデスクに戻って行った。
「あの。桜さん。古島さん、悪くないです。俺が悩んでたから励ましてくれただけで」
雅紀が恐る恐るそう言うと、桜さんは鬼の形相から、急に優しい笑顔になって
「大丈夫よ、雅紀くん。ちゃんと分かってるわ。それより、ボスが貴方をお呼びなの。洗面所で顔、洗ってらっしゃいな」
桜さんの言葉に、雅紀は首を傾げた。
「田澤さんが……俺を?」
「そ。早瀬くんからね、ボスに直接、連絡が来たみたいなの」
雅紀ははっと息を飲んだ。
「っもしかして、何かトラブルですか?」
「詳しいことはボスが話してくれるわ。さ、急いで急いで」
「はいっ」
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!




