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番外編『愛すべき贈り物』48
「う。んー……まあな。昼間、電車ん中でも話したけどさ、確かにあいつ、この頃ちょっと変なんだよな。里沙に何か話してねえかな~ってさ」
「変って? 喧嘩でもした?」
暁は口を尖らせて
「いーや。別に喧嘩なんかしてねえよ。ただ……ちょっと距離置かれてるっつう感じ? 微妙になんだけどな」
里沙は不思議そうに首を傾げた。
「そう。私は特に何も感じないけど……。暁がそう感じるってことは、何かあるのかな」
暁はじっと里沙の顔を見つめた。何か知っててとぼけているという感じはしない。どうやら里沙は、雅紀から何も聞いてはいないらしい。
「そっか。里沙も知らねえのか。んじゃやっぱ、祥悟の方か」
暁の呟きに、里沙は眉を顰めた。
「祥が……。まさかあのこ、雅紀くんに何か余計なこと」
「や。いや。そーじゃねえよ。多分な」
里沙はますます不安そうな顔になり
「でも祥なら、雅紀くんに言わなくていいこと、言ってるかもしれないわ。もしかしたらそれで傷ついて」
「ん~。ま、そういう可能性はあるかもしれねえけどさ。もしそうなら、それは結局、俺らの問題なわけなんだよ。要するに、祥悟に何か言われたぐらいで、ぐらつくような信頼関係しか築けてねえってことだろ?俺らと雅紀の間にさ」
「……暁」
「あいつは煮詰まると、暴走しちまうとこあるからさ。悩んで里沙に相談してくれてんなら、逆に安心なんだよ。ただ、祥悟に何か言われて、動揺しちまってるとしたらさ、俺があいつを安心させてやれてねえ証拠だよなぁ」
弱りきった顔でぼやく暁に、里沙は少し頬をゆるめて
「もう……ご馳走様。結局はおのろけなのね」
「ちげーよ。や、違わねえか」
「祥悟が雅紀くんに何言ったのかは心配だけど、私の目から見て、雅紀くんはぐらついてるようには思えないな。ちゃんとあなたのこと大好きだし、愛されたいって前向きに努力してると思うわ。だからきっと、そのうち雅紀くんから、あなたに話があるはずよ」
「話?」
「うん。焦らずにもうちょっと待っててあげて。ゆっくり寄り添っていきたいんでしょ?」
暁はもう1度、里沙の顔をじっと見つめた。
……なるほど。雅紀は、俺が心配しているような後ろ向きなことを、里沙に言ってはいないが、どうやら前向きな相談はしているらしい。
「そっか。んー。OK。んじゃ、じたばたしねえで、もうちっと待つわ。あいつが俺に、ちゃんと話してくれるのをさ」
「うん。そうしてあげて。ただ、祥には私から聞いてみるわ。もし雅紀くんを傷つけるようなこと言ったのなら、私が許せないもの」
ふいに、里沙のスマホが着信を告げた。
「はい。あ、祥?! あなた、今どこ? どうして勝手に…………え……えっ? 待って。どういうこと? ね、ちゃんと説明」
里沙の言葉に、暁は壁から身体を起こし、里沙の側に駆け寄った。里沙の手からスマホをひったくり
「おいこら、祥っ。おまえ、どういうつもりだ!? 今どこに、あ、おいっ」
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