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番外編『愛すべき贈り物』65※
「どういうことだよ? 話はついてたんじゃねーのかよっ」
「そう喚くな。俺だって桐島のダンナから電話もらって、すぐにすっ飛んできたんだぜ。裏の責任者にはもう話通じてるよ。ただ、店のオーナーが詳しい話を聞きたいんだとよ。とにかくここで待ってろ。速攻で許可もらってくるからよ」
大迫は呑気な顔で首を竦めると、ドアの前に立ちはだかる暁をぐいっと押しのけた。そのまま出て行こうとする大迫の肩を、暁はがしっと掴んで
「雅紀がここに居るのは間違いねえんだな?」
「ああ。それは間違いねえな。表の黒服が写真を確認してる。もう1人の美人も一緒だ」
「どの部屋だ?!」
「だから~ちょっと待てよ。すぐに許可もらってくるっつってんだろーが。……言っとくけどよ。勝手に動くなよ? 下手に騒ぎ起こすと摘み出されるぜ」
暁は無言で大迫を睨み付けた。こういう世界の交渉事は結構繊細で面倒なのだと、暁も職業柄よく知っている。こいつの言う通り、勝手なことをすればかえって手回しが効かなくなると分かってもいる。分かってはいるが、居ても立ってもいられないのだ。
こうして無為に過ごしていても時間はどんどん過ぎていく。その間、雅紀がどんな酷い目に遭っているかと思うと……。
最悪、男たちに性的暴行を受けてしまっていたとしても、怪我さえしなければ、身体なんか洗えば綺麗になるのだ。だが、ただでさえトラウマ持ちの雅紀の心に、また大きな傷を作ることが耐えられない。瀧田の件の傷もまだ癒えていないのに……。
暁はぎりっと奥歯を噛み締めると、大迫の肩から手を離し、
「頼む。急いでくれ。一刻も早く、雅紀を連れて帰りたい。あいつはこないだの一件から、ようやく立ち直りかけたばかりなんだよ。これ以上辛い思いさせたくねえんだ」
そう言って深々と頭を下げた。
大迫はちょっと驚いた顔になり、まじまじと暁を見つめた。
……こないだの一件って……瀧田のだろ。いくら雇われでも瀧田と一緒にあの子を嬲った俺に、こうもすっぱりと頭さげて頼めるとはな。そこまでマジで惚れてやがんのか、あの子に。
大迫は苦笑して、暁の肩をぽんっと叩くと
「分かったよ。いいから頭あげな。すぐにあの子のとこに連れてってやるからな」
ドアの向こうに大迫が消えても、暁は頭を下げ続けていた。
克実は苛立っていた。
祥悟に施した媚薬の効果はばっちりだ。完全に正体を失くして、男たちのなすがままに妖しく乱れ、おもちゃにされている。3人目の男の上に跨って、自ら嬌声をあげながら腰を使う浅ましい姿に、普段の高慢な祥悟の面影はまったくない。
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