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番外編『愛すべき贈り物』71
暁がそう言って雅紀を抱え直そうとすると、雅紀は震えながらぷるぷると首を振り
「俺は、いいから。暁さん、祥悟さんのこと、みてあげて」
「や、でも」
「俺、は、何もされてない。大丈夫。それより、祥悟さん。変な薬、使われてる。ひどっ、酷い目にっ、遭ってる、から」
雅紀は必死で言い募ると、暁の腕の中からもがき出て、祥悟の方に手を伸ばした。何をするのかと、暁が手助けしてやると、雅紀はがくがくしながら祥悟ににじり寄って、
「ごめんなさいっ。俺、役立たずでっ」
そう言って、祥悟の頭をぎゅっと抱き締めた。
「助けて、あげられなくて、ごめんなさいっ。辛かった、ですよね」
「……っ」
雅紀に抱き締められて、祥悟は一瞬呆然として、ちらっと暁の方を見た。目が合うと、暁は苦虫を潰したような表情で首を竦め、ため息をついた。
病院の待合室のソファーで、暁は雅紀の身体をずっと抱き締めていた。身体の震えは治まったが、雅紀は虚脱したようにぐったりと暁に身体を預けている。
後のことはいったん大迫に任せて、暁は祥悟と雅紀を病院に連れて行った。酒と薬の影響で自力歩行が出来ない祥悟が、担架に乗せられて処置室に消えると、自分は大丈夫だと言い張る雅紀をソファーに座らせた。
「祥悟さん……大丈夫かな……」
ぼんやりと雅紀が呟く。暁は雅紀の肩をそっとさすりながら
「ああ。だいぶ薬使われたみてえだからな。怪我もねえか、心配だな。……なあ、雅紀。おまえは診てもらわなくてほんとにいいのか?」
「うん。俺は大丈夫。間一髪で、暁さん、来てくれたから」
病院に来る途中、祥悟からも話を聞いたが、雅紀はどうやら裸にされただけで、薬を使われてはいなかった。男たちに嬲りものにされたのは祥悟だけで、その間、雅紀は縛りあげられて、ベッドの端に転がされていたらしい。後ろ手にされた手や猿轡された口の端に、縛めの跡がまだくっきり残っている。だが、薬を使われるぎりぎりの所で、自分の救出は間に合ったのだと知って、暁は心の底から安堵した。
……もちろん、身体は無事でも、雅紀がこの件でまた負ってしまった、心の傷の方が問題なのだが……。
「病室借りてさ、ちょっと横になるか?」
「ううん。だいじょぶ。俺、このまま暁さんの側に……いたい」
「そっか……」
出来れば雅紀を、自分の宿泊しているホテルに連れて行って、気兼ねなく休ませてやりたい。
病院に着いてすぐ、里沙に電話で連絡したから、マネージャーと里沙はこちらに向かっているはずだ。
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