524 / 605

番外編『愛すべき贈り物』73

雅紀から聞いた話では、あの店の会員だった但馬克実は、里沙と祥悟の施設時代の幼馴染みで、しかも里沙のストーカーだったらしい。祥悟がどうやってあの男を特定し、会う約束を取り付けたのかは、祥悟自身に聞いてみなければ分からない。里沙に但馬克実のことを、どこまで打ち明けていいのかも、まずは祥悟に確認してみる必要がある。勝手には話せない。 「その辺はさ、俺も詳しくは知らねえんだ。たまたま雅紀が祥悟を見つけて一緒に行動してたからさ、携帯電話のGPSで居場所を突き止められただけだしな」 里沙は振り返って、暁をじっと見つめた。暁の困ったような表情に、何か言いかけて思い直し、そのまま隣にいる雅紀に視線を移した。 「雅紀くん。貴方は大丈夫なの? 酷い目に遭ったり、してないの?」 「俺は大丈夫です。それより、祥悟さん、助けられなくてごめんなさい」 里沙はほっとした顔で首を振り 「ううん。貴方のおかげで祥悟を見つけられたんだもの。すごく感謝してるわ。それに……貴方が無事で良かった……」 「……里沙さん……」 里沙はまだ少し強ばった顔で、雅紀に微笑みかけ 「でも、祥悟のせいで怖い思いさせちゃったわね。暁、祥悟には私がキツくお灸を据えるから、雅紀くんのフォロー、お願いね」 「ああ。それは大丈夫だぜ。里沙、それで、悪いんだけどさ、ここ、おまえとマネージャーにちょっと任せていいか? 雅紀をホテル連れてって、少し休ませてやりてえんだ」 「もちろん。祥悟は朝までぐっすりでしょうから、付き添いは私たちがするわ」 雅紀は驚いて、里沙と暁を見比べた。 「え。でも……っ」 「おまえのストーカーの件があるからさ、うちの事務所の社長の知り合いに、応援頼んどいたぜ。朝までここは安全だからさ。ベッド借りておまえも少し休んどけよ」 「暁。何から何まで……ほんと、ありがとう」 「んじゃ、雅紀、行くぜ」 雅紀は不安そうに里沙と祥悟を見つめてから、暁に促されて、名残惜しげに病室を出た。 「ね。暁さん。社長の知り合いって……」 「おまえ救出すんのに力貸してくれた男だ。まあ、社長のっていうより、桐島大胡さんの知り合いだけどな」 「桐島さんの……そう……なんだ」 暁は雅紀の肩を抱き寄せると、 「みんな協力してくれてるから、なんも心配要らねえよ。さ、行くぜ。おまえも少し休まねえとな」 「うん……」 雅紀は頷いて、暁にぴとっと寄り添い歩き出した。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!