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番外編『愛すべき贈り物』73
雅紀から聞いた話では、あの店の会員だった但馬克実は、里沙と祥悟の施設時代の幼馴染みで、しかも里沙のストーカーだったらしい。祥悟がどうやってあの男を特定し、会う約束を取り付けたのかは、祥悟自身に聞いてみなければ分からない。里沙に但馬克実のことを、どこまで打ち明けていいのかも、まずは祥悟に確認してみる必要がある。勝手には話せない。
「その辺はさ、俺も詳しくは知らねえんだ。たまたま雅紀が祥悟を見つけて一緒に行動してたからさ、携帯電話のGPSで居場所を突き止められただけだしな」
里沙は振り返って、暁をじっと見つめた。暁の困ったような表情に、何か言いかけて思い直し、そのまま隣にいる雅紀に視線を移した。
「雅紀くん。貴方は大丈夫なの? 酷い目に遭ったり、してないの?」
「俺は大丈夫です。それより、祥悟さん、助けられなくてごめんなさい」
里沙はほっとした顔で首を振り
「ううん。貴方のおかげで祥悟を見つけられたんだもの。すごく感謝してるわ。それに……貴方が無事で良かった……」
「……里沙さん……」
里沙はまだ少し強ばった顔で、雅紀に微笑みかけ
「でも、祥悟のせいで怖い思いさせちゃったわね。暁、祥悟には私がキツくお灸を据えるから、雅紀くんのフォロー、お願いね」
「ああ。それは大丈夫だぜ。里沙、それで、悪いんだけどさ、ここ、おまえとマネージャーにちょっと任せていいか? 雅紀をホテル連れてって、少し休ませてやりてえんだ」
「もちろん。祥悟は朝までぐっすりでしょうから、付き添いは私たちがするわ」
雅紀は驚いて、里沙と暁を見比べた。
「え。でも……っ」
「おまえのストーカーの件があるからさ、うちの事務所の社長の知り合いに、応援頼んどいたぜ。朝までここは安全だからさ。ベッド借りておまえも少し休んどけよ」
「暁。何から何まで……ほんと、ありがとう」
「んじゃ、雅紀、行くぜ」
雅紀は不安そうに里沙と祥悟を見つめてから、暁に促されて、名残惜しげに病室を出た。
「ね。暁さん。社長の知り合いって……」
「おまえ救出すんのに力貸してくれた男だ。まあ、社長のっていうより、桐島大胡さんの知り合いだけどな」
「桐島さんの……そう……なんだ」
暁は雅紀の肩を抱き寄せると、
「みんな協力してくれてるから、なんも心配要らねえよ。さ、行くぜ。おまえも少し休まねえとな」
「うん……」
雅紀は頷いて、暁にぴとっと寄り添い歩き出した。
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