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番外編『愛すべき贈り物』75

いつも恥ずかしがって滅多に甘えない雅紀が、自分からこんな風にしてくれるのは珍しい。それだけ精神的に弱ってるのだと思うと切ないが、甘える雅紀のいつもより幼い舌っ足らずな声が、可愛いすぎてきゅんきゅんした。 「部屋、行くか‍? ちゃんと抱っこしてやるぜ」 耳元にそっと囁くと、雅紀はくすぐったそうに首を竦めて 「ううん。あの……あのね」 「ん‍~?」 「……抱いて…‍…? 俺のこと……。俺、暁さんが……欲しい」 消え入りそうな声でねだる雅紀の顔が、耳まで真っ赤だ。 雅紀はおずおずと顔をあげると、潤んだ瞳で暁を見つめて 「……ね……欲しい……」 「……っ」 暁はぴきぴきに固まった。 ……おまっ。なんちゅうエロ可愛い顔してんだよっ。心臓破裂するっつのっ。 祥悟の一件に巻き込まれて、酷いショックを受けている雅紀を、これ以上怯えさせないようにと、今夜は性的なものは一切抜きにして、雛を守る親のように甘やかしてやるつもりでいたのだ。 ……いやいやいや。ダメだろ。んな顔でうるうる見つめられたら、勃っちまうって。 動揺しまくって声が出ない暁に、雅紀は不安そうに表情を曇らせた。 「……だめ…‍…?」 ……いや! ダメじゃないです!! ダメなのは雅紀のおねだり攻撃を食らって、おおはしゃぎしてる俺の息子さんで……。 「……い……いいのかよ? おま、怖くねえの?」 暁の掠れた問いかけに、雅紀はふるふるっと首を振った。 「怖く、ない。暁さんが、欲しい」 暁はごくりと唾を飲み込んだ。 このところ、雅紀とちゃんとエッチしてなかったせいで、どうやら俺は、かなり鈍い男になってしまっていたらしい。 というより、雅紀が大事過ぎて、過保護な親みたいな心境になっていた。 何が雛を守る親のように、だ。 俺は雅紀の恋人だぞ? こんなエロ可愛く誘われないと雅紀の気持ちに気づけないなんて、俺としたことがどうかしている。 ああ。トラウマなんてくそ喰らえだ。 雅紀が今、一番望んでいるのは、優しく守られることじゃない。 「俺も、おまえが欲しいぜ。雅紀。おまえん中、挿いって、どろどろに溶けて、ひとつになりてえよ」 欲情に掠れきった暁の求愛に、雅紀はぱぁっと頬に朱を散らし、嬉しそうに微笑んだ。

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