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番外編『愛すべき贈り物』78※
暁はそっと雅紀のものから口を離すと、後ろからも指を引き抜いた。雅紀は切なげに呻いて、浴槽にヘタリ込みそうになる。
その身体をがっちりと抱いて立ち上がり
「ベッド、行こうぜ。おまえを食べたい」
耳元で囁いてちゅっと口付けると、雅紀は震える手を伸ばして暁の首にかじりつく。
暁は雅紀を支えながら、シャワーでざっと流すと、タオルで水気を取ってから、もう1枚のタオルで雅紀の身体を包んだ。
「ちょっとじっとしてろよ」
ふらつく雅紀をしっかりと抱き寄せ、足元に気をつけながら浴室を出た。
ベッドに辿り着くと、汚さないように上掛布団は隅っこに押しやり、乾いたタオルをシーツの上に敷いてから、ゆっくりと雅紀の身体を横たわらせた。
「空調、寒くねえか?」
「だいじょぶ。……ね、きて。暁さん」
雅紀はすっかり蕩けた表情で、ほよんと微笑んで両手をあげた。いつもならこれだけ部屋の灯りが明るいと、恥ずかしがってむずかるのに、デレとエロがいっぺんに降臨しているこの可愛い天使は、びっくりするぐらい大胆に誘ってくる。
……うわぁ……雅紀くん、すっげー無防備状態なんですけど?
しどけない格好の雅紀の甘えっぷりが眩しくて、どきどきする。この無自覚天使は底なしに俺をメロメロにする気だ。
暁は鼻息荒く、がばっと雅紀にのしかかりかけて、はたっと気づいた。
……やべえ……。何かローションの代わりになるもん、あるのか?
雅紀が来るとは思ってなかったから、そんなもの用意してない。ホテルのアメニティの中に乳液なんかがあったと思うが。
急に焦ってキョロキョロし始めた暁に、雅紀は首を傾げ
「……暁さん……? どした……の?」
「や。あー……ローションな、俺、持ってきてねえんだわ」
雅紀はああっと頷いて
「俺の、鞄の中……」
言ってから、ちょっと恥ずかしそうに目を逸らす。
暁が雅紀の鞄を取ってきてやると、中から薬局の袋に入ったローションを取り出した。
「……向こうの駅で……電車まで……時間あった……から……」
じわっと頬を染めて、微妙に目を逸らしつつ、言い訳のように呟く。
……うわぁ……雅紀くん。準備万端、つか、やる気満々じゃん。
自分と会うからもしかしてと思って、駅ビルの薬局で周りを気にしながら、これを買う雅紀の姿が目に浮かんで、暁は思わずニヤケてしまった。
「エッチだなぁ……雅紀くんは」
ローションの包装を外しながらにへらにへらしてる暁に、雅紀は耳まで赤くなって頬をふくらました。
「違うし……っ」
「違わねえだろ? 俺との甘い夜を想定して、これ買ってくれたんだよなぁ?」
暁はローション片手ににじり寄り、そっぽを向いてる雅紀の頬にちゅっちゅとキスを落とす。
「……んもぉ……暁さっいじわるだしっ……もういいっ」
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