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番外編『愛すべき贈り物』85

「……大丈夫……か……‍?」 暁の声で、雅紀ははっと目を開けた。知らないうちに飛んでしまっていたらしい。目の前には気遣わしげな愛しげな暁の目。 雅紀はふにゅんっと微笑んで 「……だいじょぶ……です……俺、今……寝てた…‍…?」 ちょっと呂律の回らない舌ったらずな言葉に、暁はほっとしたように頬をゆるめた。 「はは……完全に飛んじまってたな。んな気持ちよかったんだ‍?」 優しく頬を撫でてくれる暁の手の感触が心地いい。雅紀はまだ半分蕩けた顔を、その手にすりすりさせた。 「ん……。すっごい……よかった……」 満足そうにぽーっとしてる雅紀に、暁は内心胸を撫で下ろしていた。 ……また怖い目に遭いかけて、例のトラウマが出ちまったりするんじゃないかって思ってたが……。この分だと大丈夫だったみてえだな……。よかった。 怖い夢を見ては飛び起きて、青い顔して震える雅紀を、夜中に何度も抱き締めた。あの日々をまたいちから繰り返すのは、すごく切ない。 「なあ、雅紀。おまえさ……また強くなったんじゃね?」 暁の言葉に、雅紀はきょとん…となって 「……へ‍?……強く…‍…?」 「そ。いや、逞しくなったっつーの? 今回またすっげー怖い思いしたじゃん、おまえ。祥悟のバカのせいでさ。だからしばらくは、俺とこういうことすんのも、怖いかも‍? って思ってたんだぜ」 雅紀は、ああっと納得顔で頷いて 「そっか……心配、してくれてたんですね、暁さん。ごめんなさい」 「ばーか。おまえが謝んなっつの。悪いのはおまえ巻き添えにした祥悟だぜ」 雅紀はふるふると首を振り 「祥悟さんだって被害者だし。それにね、今回、俺、どうしようってすっごく焦ってたけど、前の時みたいな絶望的な気持ち、なかった気がする。暁さん、絶対来てくれるって信じてたし。自分のことより、祥悟さんをとにかく助けなきゃって必死だったから」 「そっか」 暁は、にこっと笑って雅紀の髪の毛をわしわしした。 「ま。俺を信頼してくれんのはいいぜ。俺は絶対におまえのこと救い出すヒーローだかんな。でもさ、やっぱあんま無茶はしてくれるなよ。見つけるまでのドキドキハラハラが半端ねーしさ」 言いながら頭を撫でてくれる暁の顔が、ちょっと辛そうだ。雅紀はしゅんとして、暁の胸に顔を埋め 「ごめんなさい……俺……暁さんの役に立ちたくて……でも無謀だったって思う。反省してます……」 暁は胸にすりすりしてくる可愛い仔猫を、愛おしそうに抱き締めた。

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