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番外編『愛すべき贈り物』86
「それにしても祥悟のヤツ……理沙のストーカーがあの男だって、どうやって突き止めたんだろな」
雅紀は、暁の胸から顔をあげ、
「俺もそれは不思議だったけど……。あの人ってもともと、施設にいた頃の幼馴染みだったんですよね。横でちょっと話聞いてただけだから、よくは分かんないけど」
「幼馴染なぁ……。で、一方的に想いを募らせて、里沙にストーカーしてやがったのか」
「本人は、大人になったら結婚するって、里沙さんと約束したつもりでいたみたいです」
「んー……それって相当病んでんなぁ。里沙が祥悟と一緒に施設出たのって、まだ10代半ばのガキの頃だろ。そんな昔の夢物語みたいな約束信じて、ずっと生きてきやがったのかよ」
「うん……ちょっと異常ですよね……。祥悟さんの話だとね、あの人、施設にいた頃はいじめられっ子で……多分、里沙さんが庇ってあげたりしてたのかな……。祥悟さんはむしろ、いじめてた方みたいだったけど」
暁は呆れ顔でため息をついて
「ああ……な……。なんとなーく……想像つくわ。んじゃやっぱ、祥悟は自業自得だな。因果応報ってやつだ」
雅紀はもぞもぞと暁の胸元から顔を出して
「ね。暁さんって……祥悟さんにはかなり厳しいですよね? どうして?」
暁は首を傾げて、まあるい雅紀の瞳を見つめ
「んー厳しいか~? 別にそうでもねえと思うけどな。ただ……なんつーか…あいつが里沙に甘えすぎていい加減なのが、ちょっと許せねえ気がすんだよ」
「甘え過ぎて……?」
「親のいねえ姉弟でさ、物心ついた時から施設で育って、その後も養子として引き取られてさ。本人のせいじゃねえ苦労、いろいろしょい込んで、大変なのは分かってるけどな。でもそれ言ったら、里沙だっておんなじ境遇だ。その上里沙のヤツは、双子なのに姉貴だっていうだけで、いろんな気苦労抱えて生きてきてんだろ? おない年の弟なら、それ分かってやって、もっと支えてやんなきゃダメだよな。拗ねて甘えて里沙に迷惑掛け通しってのがさ……。なんつーの? 見てて歯がゆいんだよ」
雅紀は神妙な顔で、暁の言葉を聞いていたが
「たしかに…暁さんの言う通り、祥悟さん、里沙さんに甘えてるかも。でも……それって祥悟さんなりの愛情表現なのかもしれないです」
「愛情表現?」
「うん。2人のほんとの気持ちなんて、俺にはわかんないけど……。大切な相手だからこそ、甘えてるのかも。里沙さんも困ったって口では言ってるけど……甘えて頼られることで……いろんなこと乗り越えてきたのかなって」
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