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番外編『愛すべき贈り物』87

暁は雅紀の顔をじーっと見つめた。 「なるほどな。ま、傍で見てるだけじゃわかんねえよな。たしかに甘えられて頼られてってのも、愛情確認のひとつには違いねえし」 雅紀はちょっと言い淀んでから 「暁さん。あのね……。あの克実って人が言ってたんです。祥悟さん……ずっと片想いしてるって」 「片想い……‍?」 「あの人の言ったこと、ほんとかどうか分からないけど……。絶対に叶わない恋をしてて……祥悟さんもずーっと……苦しんできたのかな……」 最後の方は独り言みたいな呟きだった。誰に‍? とは敢えて聞かない。今の話の流れで容易に察せられることだ。 我儘で強引で自己中な祥悟に、いくら人がいいとは言え、生真面目で意外に頑固な雅紀が、文句も言わずに付き合っているのは、ひょっとするとそういう部分に共鳴するものがあるのかもしれない。 まあ、俺自身も、祥悟のやる事にイライラはさせられるが、絶縁したいほど嫌っているわけではない。 なんと言うか……憎めない男なのだ。アイツは。 ……ま。でも今回の件は後でたっぷりお灸すえてやんねーとな。 ストーカーなんかしてやがる厄介な男との密会に、わざわざ雅紀を連れて行きやがったんだ。何が起こるか予想つかなかったっつっても、雅紀を巻き込む気満々だったのは間違いねえ。 暁は雅紀の乱れた髪を優しく撫でつけて、額にちゅっとキスすると 「さて……と。そろそろ寝るか? おまえ、いろいろあって疲れたろ」 雅紀は擽ったそうに一瞬きゅっと目を閉じると、大きな目を見開いて暁をじと……と見つめる。 「お‍? なんだよー。その不満そうな顔。あ、もしかしてさ、まだ俺が食いたりねーとか‍?」 揶揄い口調でへらへらしながら顔を覗き込むと、雅紀はじわ……っと目元を染めて 「足りなく、ないしっ。……でも……」 「でも‍?」 「……暁さんの……顔見て……したい……」 上目遣いの雅紀の目が濡れて揺らめいている。 ……うわぁーお。なにそれ、なにその可愛いおねだりっ。おま、マジで俺を殺す気かよっ 穏やかにフェイドアウトしていた情欲に、また火がついた。暁はドキドキしながら、雅紀の唇にちゅっとキスを落とすと 「俺の顔見て、してえんだ?もう…可愛い過ぎんだろ、おまえ…」 低い声で囁く暁に、雅紀は微妙に視線を逸らしながら、こくんと頷いた。

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