542 / 605
番外編『愛すべき贈り物』91
ふと目が覚めて、雅紀はぼんやりと隣に目を向けた。すぐ側に、愛しい人の寝顔がある。
……暁さん……。
昨夜はどろどろになるまで愛し合い、眠りについた。べたべただったはずの身体は、すっきりと拭き清められていて、いつのまにかホテルの寝間着を着せられている。暁がやってくれたのだろう。この優しい恋人が。
暁にたっぷり愛されて、抱き締められて眠ったせいか、前に酷い目に遭った時のような悪夢はまったく見なかった。
暁は、強くなったと言ってくれたが、それはきっと彼に愛されているという気持ちが、そうさせてくれてるんだろう。
事務所で古島に言われたことを思い出す。
『……君たちがこれから共に歳月を重ねていった先に、2人の魂が深く寄り添い合えていれば、他に何も必要ないんじゃないかな』
……2人の魂が深く寄り添い合えていれば……。
古島は、余計な雑念は捨てて、真っ直ぐに素直に、暁の心を見つめてみろと言った。きっと君には見えるはずだと。
……暁さんの心……。そして、俺の心……。
「……ん……暁……さん……」
「お。目、覚めたか」
雅紀は眠そうに目をしばしばさせた。暁はその柔らかい目蓋にちゅっとキスを落とすと
「チェックアウトまでは、まだまだ時間あるぜ。眠かったらもう少し寝とけよ」
雅紀は擽ったそうにきゅっと目を瞑ってから、ぱちっと開けて
「今、何時?」
「んー?8時過ぎだ」
暁の返事に、雅紀はがばっと身を起こした。
「暁さんっ病院! 行かなくちゃ。祥悟さんと里沙さん……」
暁は雅紀を宥めるように抱き寄せる。
「大丈夫だ。2人の付き添いはさ、古島さんが朝イチでこっち向かってくれてるからな」
暁にすりすり頬擦りされて、雅紀はほっとしたように身体の力を抜いた。
「そっか……古島さん、来てくれるんだ……」
「ん。一応な。たださ、恐らく里沙の護衛の案件は、ストーカーがあいつだって特定出来た時点で俺の手からは外れるぜ。監禁暴行致傷は立派に犯罪だからな。警察へ行くか、示談にするか、祥悟の意思を確認した上で、次の段階に進むだろ。社長と桐島さんも間に入ってくれるみたいだからな。もうなんも心配要らねえよ」
雅紀は暁にきゅっと抱きついて、胸に顔を埋めると
「そっか……よかった……。それなら任せても安心ですね。
……ね、暁さん?」
「うん? どーした?」
雅紀はひょこっと顔を出して、大きな目で暁をじっと見つめると
「……祥悟さんと……寝たことある……の?」
「……は?」
雅紀の意外な質問に、暁は目を見開いた。
「ちょっおまっ。何言ってんの? 俺が……祥悟と? んなわけあるかよっ」
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!




