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番外編『愛すべき贈り物』93

真剣な表情で、そんなにじっと見つめて言わないで欲しい。 祥悟の言ってることは嘘じゃない。あの頃の自分がどんだけサイテーな男だったかは、ちゃんと自覚している。 でも、それは雅紀と出逢う前のことで。 情けない言い訳に過ぎないけれど、自分なりに理由もあって。 ……いや。やっぱ言い訳だよな。 不誠実な男だと思われるだけのことはしてきたのだ。雅紀が自分のことを信用出来ないと思ったとしても、それを責める資格はない訳で。 「ごめん。雅紀。確かにな。俺は節操なしのいい加減な男だった。誘われれば誰とでも寝てた。祥悟の言ったことは本当だ。ごめん」 暁は自分を見下ろしている雅紀の目を真っ直ぐに見つめた。過去の過ちは消すことが出来ないけれど、これからの自分は変えていける。というか、もう自分には必要はないのだ。行きずりの、現実逃避の為の恋なんて。 「信じてもらえねえかもしんねえけどさ。俺はもう……」 「来る者拒まずで誰とでも寝たけど、どの人とも多くても2~3回会って終わり。長続きはしなかったって」 「……う……。そう……でした」 相変わらず、雅紀の顔には何の表情も浮かんでいない。人形のような冷たく整った美貌で、心の奥まで覗き込んでくるような真っ直ぐな眼差し。 「長続きしたのは唯1人。里沙さんだけ。彼女とは、定期的に何度も会ってたんですよね?」 「……へ…‍…?」 「里沙さんだけは他の女性と違ってた。好き……だったんですよね? 彼女のこと」 「え……や、えっと……」 「里沙さんのこと、好きなんですよね? 暁さん」 暁はぼんやりと雅紀の唇を見つめた。何だろう。昔の不実を責められていると思ってたら、雲行きが変わってきた気がする。 里沙‍? ……確かにあいつはあの頃のセフレの1人で、今でも交流のある唯一の女だ。雅紀の言うとおり、他の女とはその場限りがほとんどだったが、里沙だけはずっと続いた。身体の相性が良かったこともあるし、互いに余計な干渉はしない所が気に入っていて……。でも……。 ……好き‍? 好きって何だよ。俺が里沙のことを好き…‍…? 好きか嫌いかと聞かれれば、里沙のことは好きだと思う。 だけど今、雅紀が俺に聞いている「好き」は、そういうことじゃないよな‍? 「や。おまえ、何言ってんの‍? そのことなら前にも言ったじゃん。つか、何回も言ってるだろ? 里沙のことは嫌いじゃねーよ。でも俺はあいつをセフレとしてしか見たことねーし、里沙だって同じだ。あいつは……」 「暁さんはそうかもしれない。でも里沙さんの気持ちまでは、分からないでしょう?」 遮られて、暁ははっとして雅紀の目をもう1度見つめた。感情がないと思っていた雅紀の目に、何故か哀しみの色が宿っている。 「俺、分かるんです。自分が苦しい恋してたから。何となく感じるんだ。里沙さんの気持ち。里沙さん、ずっと苦しい恋してますよね? その相手って、暁さんじゃないんですか?」 「……っ」

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