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番外編『愛すべき贈り物』96
言いながらじわじわ赤くなっていく雅紀を、暁はちょっと新鮮な気分で眺めた。
……こいつ……何言っちゃってるんだよ? つか、祥悟のバカに、んなこと言われてたのかよ。
「ばーか。未練なんかねーよ」
「でもっ。でもね。すっごい暁さん好みの胸とお尻の女性が、好きだから抱いてって迫ってきたら……」
「もちろん、俺は小さいけど感度抜群の乳首と、きゅって締まってるけどエロエロな可愛いお尻のパートナーがいるから間に合ってます。って言うぜ?」
雅紀は耳まで真っ赤にして、口をぱくぱくしている。
「つまりだ。雅紀は祥悟にいろいろ言われて、俺のこと信じられなくなっちまったのな?」
暁の悲しそうな呟きに、雅紀の顔色が変わった。
「違うっ。信じられないとかじゃ、なくて」
「だってそういうこと、だろ? 俺より祥悟の言葉を信じちまったわけだよな」
雅紀は泣きそうな顔で、首をぶんぶん横に振ると
「違うからっ。そうじゃない。俺、暁さんに後悔して欲しくないんですっ。自分の未来の選択肢、最初から狭めて欲しく、なくて。俺のこと、好きって言ってくれる暁さんの気持ち、疑ってるんじゃないんです。俺が心配なのは、今じゃない。もっと先の、数年後とか10年後とか……。だって俺に無いのは、胸とか柔らかいお尻だけじゃない。俺は、俺は、あなたの子ども、産んであげられない。だから、里沙さんが、暁さんのこと好きで、暁さんも里沙さんのこと、他の女性とは違う感情持ってるんなら、俺とのこと、冷静になって考えてみるべきだって、思った。彼女との未来も、1度ちゃんと考えてみるべきだって……」
両手を握り締めて、必死に言い募る雅紀に、暁はせつなくなった。
……もしそれで、俺が里沙との未来を選んだら、こいつは潔く身を引くつもりだったんだろう。自分が幸せになるよりも、どこまでも俺の幸せが優先なんだろうな……。
「おまえがこのところ、ずっと変だったのはそれかよ。でもそれは、祥悟に何か言われてってことじゃねえよな。おまえ自身の心の問題なんだろうな」
「え……」
暁は両手を広げて、雅紀の身体をぎゅむっと抱き締めると
「でもさ、おまえの本音、聞けてよかったぜ。そんなら俺も安心して本音が言える」
「……暁さん……?」
暁は雅紀の背中を優しくさすると、
「俺が里沙を選ぶことなんか100%ねえよ。んなこと、おまえだってほんとは分かってんだろ?」
暁の囁きに、雅紀はぴくんと身体を震わせた。
「目の前にある幸せが、そんなに怖いか? 手を伸ばせば届くんだぜ? 俺の手はさ、いつだって真っ直ぐにおまえに向いてる。それがそんなに怖いか?」
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