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番外編『愛すべき贈り物』104

お互いの心を根こそぎ貪り尽くすような激しいキスの後、暁は唇を放して雅紀の涙を指でそっと拭った。泣き濡れた雅紀の大きな瞳からは、いつもの自信なさげな揺らめきは消えている。その真っ直ぐな綺麗な眼差しが、愛しいのにせつない。 暁は急に脱力したように、雅紀の隣にごろんと転がった。 「おまえって、なんつーか……危ういヤツだよな…」 「へ‍? 危うい……って…‍…?」 きょとんとする雅紀に、暁は疲れたような笑いを漏らし 「や。……何でもねえ。それより、来いよ。朝のいちゃこら、しようぜ」 ニヤリとして手をわきわきさせる暁に、雅紀は途端に顔を顰めて 「しません。いちゃこらなんか」 暁は、はぁ‍?っと目を剥いた。 「おまっ。このものすっごいデレムードん中で、俺の愛を拒否るってどーいうことだよ?」 雅紀は目を泳がせ、じわっと頬を染めた。 「だって、昨夜したし。もう朝だし。外、明るいし……」 「チェックアウトまでは時間あんじゃん。照れてねえでもっとデレろよ、ほらっ」 んー……っとむずかり顔で、カーテンの隙間から射し込む光を気にしている雅紀の腕を、暁はぐいっと引っ張ると 「絶対に、逃がさねえって、言ったろ‍? さっき。おまえは俺のもんなんだろ」 耳元で囁いて、悪い顔をする暁を、雅紀は赤い顔で横目で睨みつける。 「そういう……意味じゃ、ないし……」 まだもじもじ抵抗している雅紀の耳を、暁は甘噛みしてぺろんと舐めた。雅紀はきゅんっと首を竦め、ぷるぷるする。 「んな激しくしねーよ。ちょっとだけ、な‍?」 言いながら雅紀の首筋に吸い付き、ガウンの隙間から手を差し入れた。指先で探り当てた尖りをさわさわと撫でると、雅紀はくぅんと仔犬のような声を漏らす。 「エロい声、出てんじゃん」 上目遣いに睨んでくる雅紀の潤んだ目に、暁は片目を瞑ってみせると、そのまま雅紀にのしかかった。 祥悟は、そろそろと里沙の顔に自分の顔を近づけた。こんなにも近いのに、決して届かない遠い存在。打ち消すほどに愛しさは募る。 「……里沙」 小さく呼び掛けてみる。里沙は目を覚まさない。 「起きろよ……襲っちゃうよ‍?」 頬を伝う涙の跡は、もう消えていた。すやすやと無邪気に眠る里沙に、祥悟はギリギリまで顔を近づけると、形のいい鼻の頭にそっとキスをした。 「ん……」 里沙は少し顔を顰める。でも目は覚まさない。祥悟は息を詰めたまま、その柔らかそうな紅い唇に、キスを落とした。触れるだけのキス。愛しくて苦しくて胸が詰まる。鼻の奥がツンとしてきた。 泣くとか無理だ。格好悪すぎだろ。 ……もういっそのこと……このまま奪ってしまおうか。

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