561 / 605
番外編『愛すべき贈り物』110
「おわっっ」
「わっ」
突然の着信音に、どエロモード全開だった暁は、間の抜けた声を出して飛び上がった。後ろから暁に抱き締められて、イく寸前まで昂っていた雅紀も、一緒に飛び跳ねた。
「んだよっ。電話かよっ」
2人は半分色ボケ状態のまま、ぽやーっと顔を見合わせ、充電コードにささったままのスマホに目をやった。着信音はしばらく鳴り続け、いったん切れた。
また2人で顔を見合わせた途端に、電話が再び鳴り始める。
……くっそ~。いいとこだってのに!
我に返った雅紀は真っ赤な顔で、暁の腕の中でじたばたし始めた。
「……ぁきら……さん、電話、出ないと……」
暁は内心盛大に舌打ちしながら、紅潮した雅紀の頬にちゅっとキスして、泣く泣く身体を放してベッドから降りた。
……誰だよっったく! 空気読めっつーのっ
電話の相手にそんな理不尽な悪態をつきながら、すっ飛んでいって電話をとる。
「はいっ暁ですっ」
暁のスマホの電話番号は、限られた人間しか知らない。どうせ相手は田澤社長か事務所の誰かだろうと思って、若干乱暴に名乗ると、予想外の相手の声に、暁は眉を顰めた。
「は? ……あぁ……渡会さん、ですか。あ、いや、大丈夫ですよ。何かありましたか? ……ええ……はい……ええ……」
電話の相手は、祥悟のマネージャーの渡会だった。ベッドの上で気遣わしげに自分を見ている雅紀に、暁はウィンクして、電話しながら雅紀の側に戻る。ベッドに腰をおろし、逃げようとする雅紀をぐいっと抱き寄せた。
「あー……はい、なるほど。橘さんが。……あ、知ってますよ。里沙の義理のお父さんですよね? ……祥悟のヤツが? ……あ、じゃあこっちに戻って来てるんですね? ……ええ、それはもちろん構いませんが……はい、わかりました……え? いやいや、それは事務所通して貰えれば……はい、んじゃ、お願いします」
暁はもがく雅紀を片腕で抱き締めたまま、電話を終えると、スマホを放り出して、雅紀の身体を両腕で抱き締め直す。
「ちょ……あきらさ……っだめっ。電話、マネージャーさんですよね? 何かあったんですか?」
もがく雅紀に、暁は頬擦りすると
「いや。祥悟のヤツ、強引に退院してきたみてえだな」
「え? もう? 身体、大丈夫なんですか?」
「んー……まあ、怪我もたいしたことねえし、薬も一応抜けたみたいだからな。本人が自宅療養してえって言えば、出ても問題ねえらしいんだけどさ」
「病室って……やっぱ落ち着かないから……嫌だったのかな……」
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!




