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月下の宴3※
『ね。祐介さん。もうやめて。俺、怖い……。ねえ、これ、ほどいて。逃げたりしないから…』
『お前の言うことなんか信用出来るもんか。昨日だってそう言って、目離した隙に逃げようとしただろう』
『あうっ……あっやだっそれやっ……入れないでっ……あぅやだぁ』
『うるさいなっ。大声出すとまた口塞ぐよ』
『おねがぃ……ゆるし……あっあっ……薬はもぅ、やだっ…』
『僕と別れたいなんて嘘言った罰だ。それに、お前、本当はこれ好きだよな?これ使ってスルと、よがりまくるくせに』
『ちが……っ……あっあーーーっっ』
『こら、暴れると先っぽ傷つくよ。あとで酷い思いしたくないだろう』
『あー……あっ……ぁあ…』
『ほら見ろ。気持ちよくなってきただろう。今日はこっちも試してみるから。楽しみにしてなよ』
夢を見ているのだと分かっていた。それでも怖かった。あれから7年以上経っていることの方が夢で、本当は自分はまだ監禁されていて、祐介に身体をおもちゃにされているのかもしれない。
……ちがう……これは夢だ……俺はもう大学生じゃない……社会人で、仕事してて、大切な人がいて……大切な…
「……あ……きら……さん…」
雅紀は泣きながら、自由にならない口を必死に動かし、暁の名前を呼んでいた。
桐島の不機嫌そうな顔に、瀧田は首をすくめ
「目を離している間に、随分と好き勝手にされていたようですね」
「早瀬暁……か……。薄汚い探偵風情が、私の物に手を出すとはな」
桐島は唸るように呟いて、ベッドの上に横たわる雅紀の、ほっそりとした身体を見下ろした。
はだけたドレスシャツの隙間からのぞく、雅紀の色の白い滑らかな肌には、明らかに情事の跡と分かる、赤い刻印が無数に散っている。
瀧田はそのひとつを指先でつい…っとなぞり
「せっかくの綺麗な肌が台無しです。まずは綺麗に浄めてあげないといけませんね。」
瀧田の指がすいっと滑り、胸の突起に触れる。雅紀の身体がぴくっと震えた。そのままくるくると撫でると、固くなってつんと突き出てくる。
「ふふ……なるほど、たしかに感じやすいですね。これは色々と遊び甲斐がありそうだ」
「あまり強いものは使うなよ。薬などなくても、これの身体は充分に感度がいい」
瀧田は口の端をあげて笑むと、ベッドに腰掛け、立ち上がった尖りを指先で摘まんでなぶりながら
「もちろん。こないだのこみたいに、すぐに壊れちゃったらつまらないですからね。せっかく手に入れた可愛いdollだ。丁寧に遊びますよ」
桐島は、瀧田の指先で膨らみ色づき始めた尖りを見つめながら、ちょっと嫌そうな顔をして
「総。それはお前のdollじゃない。私のものだ。少し貸してやるだけだからな。忘れるなよ」
瀧田はふふ…っと笑って、桜色の突起に軽く爪をたてた。
アパートに戻って、旅行バッグに一応3日分程度の着替えを詰めこみ、暁はため息をついて、テーブルの上の灰皿を引き寄せた。
スマホをまた確認してみる。送ったラインのメッセージに既読はついていない。
煙草をくわえマッチを擦った。火をつけて煙を深く吸い込む。
「もう7時だぜ~。夕食に招待されたっつってたの、4時だったよなぁ」
ため息とともに煙を吐き出しながら、暁はガリガリと頭をかいた。
……資産家の夕食会ってことは、あれか、大勢客呼んでパーティーか。それとも食事の後で、仕事の話にでもなってんのか。
仙台行きの最終の新幹線に乗るためには、21時過ぎの電車がギリギリだ。雅紀からの連絡が、今きたとしても、駅で落ち合って顔を見るぐらいの余裕しかない。
お互いに仕事があって、客の都合が最優先になる。急な予定変更も仕方ないことだが、今このタイミングで、雅紀を1人置いて旅立つのは痛かった。
ストーカーの件もあるが、雅紀が話をしたがっていた。そして自分も雅紀に話してみたいことがある。
……とりあえず、まずは連絡取らねえとな……。
暁はスマホで雅紀の電話番号をタップすると、思いきってかけてみた。
『……電波の届かない場所にあるか、電源が入っていない為…』
「……やっぱりダメかぁ…」
暁はまたため息をつくと、煙草を灰皿に押し付けた。
「ん……う……あ……あ……はぁ…」
自分の変な息遣いと、ブーンという虫の羽音のようなものが耳障りで、雅紀は目を覚ました。
自分では目を開けたつもりなのに、視界は暗闇に包まれている。
まだ朦朧とする意識の中で、自分の身に起きていることをぼんやりと考えてみた。
……ここ……どこだ……?俺……眠ってた?なんで……目開かないんだろ…
だんだん意識がはっきりしてくると、同時に身体の感覚も戻ってくる。
身体の奥に妙な違和感がある。いやに全身が気だるくて、覚えのある甘い疼きにじんわりと包まれていた。
雅紀は自分の身体を確かめようと、脇に手をついて起きあがろうとして……ひやりとした。
……なに……これ……なんで……?
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