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番外編『愛すべき贈り物』127
目の前の男の様子に、祥悟は流石に気味が悪くなってきた。大胆というか豪胆というか、無神経なのかサイコパスなのか。それともこの滑稽な浮気が里沙にバレても、修羅場にならないだけの自信や勝算でもあるのか。
ドン引きしている祥悟に気づかないのか、暁は好奇心いっぱいの表情で、祥悟の顔のパーツをひとつひとつじっくり見た後、視線を首の方に落とした。
「へえ。なるほどな。喉仏はチョーカーで隠してたわけか。これじゃあ気づかねえし。いやぁ、勉強になるぜ。また男引っ掛けちまわねえように、次からはここも要チェックだな」
さっきのショックからすっかり立ち直り、人懐っこい笑顔を見せる暁の呆れた言葉に、祥悟はまたしてもピキッとなった。
……やっぱこいつサイテーのクズ野郎だ。里沙には全然相応しくねえじゃん。
祥悟はムカっときて、暁のガウンの襟をぐいっと掴み締める。
「おまえ、さっきから何言ってんの? 自分の立場分かってないわけ? 次って何だよ。この後に及んで、まだ他の女にも手ぇ出すつもりかよ!」
綺麗な顔から飛び出したドスの効いた声。暁は目を丸くしている。
「俺は里沙の弟だって言ってんの。分かる? もちろんこのことは里沙に言うよ。こんなのバレたら当然怒られるだけじゃ済まねえだろ。里沙のこと、弄びやがって。このクソ野郎がっ」
怒りまくり、襟をぐいぐい締め上げると、暁は表情を曇らせ
「まあ、弟のおまえからしたら、当然そう思うよな。でもさ、弄ぶってのは違うぜ。俺と里沙はお互い納得ずくの大人な関係ってヤツだ。里沙には本命が別にいるからな」
……大人な関係……?お互い納得ずく……?
穏やかな口調で、ほろ苦い表情でそう言う暁に、今度は祥悟の方が呆けた顔になる。
……嘘だ。そんなこと、絶対にありえない。
「……く、口からでまかせ、言ってんなよっ」
首を締め上げられたまま、暁は抵抗する様子もなく、祥悟の顔をせつなく見つめて
「嘘じゃねえよ。弟のおまえにこういうこと言うのも何だけどな。俺と里沙はいわゆる……セフレってヤツだ。何なら今ここに里沙を呼ぶか? 本人に直に聞いてみてさ、もし俺の言ってることが嘘なら、俺は大人しくおまえに殴られてやるぜ」
……セフレ……? 里沙がこいつと? まさか……まさかそんな……。
祥悟自身、遊びで女を抱くし、男に抱かれることもある。ウブなこどもではないのだ。モラル的には決して褒められたことではないだろうが、そういう大人な関係の存在を否定はしない。でも里沙が?まさかあの里沙が……?
「よ、呼んでみろよ。じゃあ呼んでみろ、里沙を。そんなこと出来るわけ……」
「いいぜ。どのみちおまえの口から、今夜のことはバレバレだしな。電話するからさ、手離してくんねえ?」
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