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番外編『愛すべき贈り物』128
まったく動じる様子もなく、祥悟の手を外させようとする暁に、祥悟は言葉を失った。
……里沙がセフレなんか作るはずない。でも、じゃあどうしてこいつはこんなに平然としていられる?この手を離したら、本当に里沙を呼ぶつもりか? で、里沙が来たら、こいつは何て釈明するんだ? ナンパしたら君の弟くんだったよ~ごめんな、なんて平気で言うのか? 里沙に?
……言いそうだ。この男は平気でそういうこと、言ってしまうだろう。そしたら、里沙は何て答える?
暁は、力の抜けた祥悟の手をそっと外させると、黙り込んでしまった祥悟の頭を優しく撫でてから、ベッドから降りてテーブルの上のスマホを取り上げた。里沙の番号を開いてから、ベッドの上の祥悟をちらっと見て
「呼ぶぜ? いいんだよな? あ、でもさ、この状況で姉貴とご対面ってさ、おまえの方は気まずくねえか? それ、平気なら電話するけど」
祥悟はのろのろと顔をあげ、暁の方を見てぼんやりと呟いた。
「ばかじゃん? ここ、ラブホだろ。この部屋に里沙呼びつけるとか、無神経過ぎ」
暁はああっと納得した顔で
「たしかにな。んじゃ、いったんここ出て、どっか場所変えるか?」
祥悟は無表情で首を傾げ、しばらく考え込んでから
「じゃあ、今から里沙んとこ行く。あんたも一緒にだ」
その言葉に暁は目を見張り
「いいのか? 俺も一緒に里沙の家に行っても。っつーか、もうこんな時間だろ? 里沙、明日は仕事とか」
「明日はオフ」
「んじゃ、とりあえず行くって電話するぜ」
「いい。電話しなくて」
「や、いやいやでもさ、女性の一人暮らしんとこ、アポなしで行くっつーのは流石に……」
「あんたバカだろ。俺は弟。だいたい遊び人の癖に、そういうとこだけ常識人ぶるなっての」
祥悟はむすっとした顔で毒舌を撒き散らしながら、ベッドから降りた。おもむろにガウンを脱ぎ捨てると、さっき外したブラジャーをシーツの上から摘まみ上げる。
「それ、着けんのか?」
スマホを持ったまま、興味津々に祥悟の様子を見ている暁に、祥悟は侮蔑の視線を投げて
「男に興味ないくせにジロジロ見んな。いいからあんたも服着ろよ」
祥悟はブラジャーを見て、溜め息をついてからつけた。畳んで置いておいたブラウスとスカートも、躊躇なく慣れた様子で身につけていく。
暁は首を竦め、自分も着ていた服に着替え始めた。
怒りのオーラを全身から立ち上らせているが、祥悟は明らかにさっきより元気がない。
……まあな。弟としては、自分の姉貴のそっち方面の生々しいプライベート情報なんか知りたくねえだろうな。……にしてもすっげー化け方。里沙と同い歳なら、俺より歳上だろ。それで女装して違和感ないとか凄すぎるっつーの。っつうか、こいつ、俺のこと調べて、狙い撃ちしてきやがったんだよな? 今夜あの店にいたのも待ち伏せか。ちっ不覚だったぜ。探偵が身辺調査されてて気づかなかったとか、社長に知れたら大目玉だろ。
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