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月下の狂宴4※
「逆らってはダメだと言ったでしょう?ご主人様の命令は絶対です。さあ、入れなさい」
瀧田の不機嫌そうな声に急き立てられ、雅紀は握らされたディルドを自分の穴に押しあてた。くちゅ…っと音がして、冷たいローションの感触に、身体がびくっと強ばる。瀧田は雅紀の両足をすくいあげて、更に開かせ
「ゆっくり入れていきなさい。力を抜いて。さっきはもっと太いものを、ちゃんとくわえたでしょう」
少しずつ、無機質なものが小さな穴を押し広げてゆく。雅紀は苦し気に眉を寄せ、自分で自分を犯していく様子を鏡で見つめた。
薬で意識が朦朧としていた時には、感じる余裕のなかった、羞恥と屈辱と絶望が、じわじわと心を冒す。
悪夢のような現実だった。
暁と過ごした幸せ過ぎた時間は、もう遥か遠い夢の世界の出来事だ。
……暁さん……ごめんなさい……。
さっき送ったメッセージを読んで、暁はどんな思いをしているだろう。
あんなにも優しく、自分を心配し、気遣い、守ってくれた暁に、自分が返すことが出来たのは、恩知らずで残酷な最後通告。
罠にはまったとはいえ、桐島の愛人だったのは真実で、そのことを隠して暁と愛し合った。
全ては身から出た錆。
優しい暁を傷つけた自分に、許しを請う資格などないだろう。
この醜悪な姿は、自分には相応しい罰なのかもしれない。
狭い隘路を押し広げ、ディルドの頭の部分がようやく中に潜りこんだ。雅紀は浅い呼吸を繰り返し、自分に罰を与える手に、更に力をこめる。
「綺麗ですよ、雅紀。その泣きそうに歪んだ顔も、赤く膨らんでめくれたここも。自分の感じるところを探しながら、もっと奥に入れて。そう、とても上手ですね」
雅紀はもう一方の手も添えて、両手でディルドを握ると、ぐっと中に押し込んだ。
「……はぁ……あっぁ……んっ…」
「そのあたりで止めて。中で回してみなさい」
瀧田の言葉に操られながら、ディルドで中をぐりぐりかき回すと、異物感とは別の感覚が身体を痺れさせていく。
「んあうっっ…」
感じるポイントをかすめたのだろう。びりっとするような快感に、雅紀は喘いで思わず手を離し、仰け反った。
「あたりましたか?さっき貴弘に何回もイカせてもらったでしょう。そこが君のいいところですよ。」
ディルドを離し、救いを求めるように宙に伸ばした雅紀の手を、瀧田は掴んでもう一度ディルドを握らせ、自分も手を添えて
「上手にアナニー出来るように、ちゃんと練習しましょうね」
言いながら、雅紀の手ごと、少し抜け出たディルドを押し込み、さっきの場所でぐりぐり回してみる。
「ああっあっあっんああぁーーやぁあん…んあっ」
艶に染まった鳴き声が、雅紀の口から次々あふれ出た。放された足は空を蹴り、内腿が痙攣している。
「気持ちいい?雅紀。」
「あっんーーっやっんっんううん…」
「ちゃんと答えて」
ピンポイントでそこばかり擦ると、雅紀は耐えきれない涙をこぼし、甘い声をあげ腰を揺する。
「……ほんと淫乱。薬の効果はだいぶ薄れているはずですよ。答えなさい、雅紀。でないとお仕置きです」
「やっやぁ……あっくるし……っひ…っ」
「違います。気持ちいい、でしょう?」
「んぅっん……い……いぃ……ああ……んっきも ……ちいっ……いいっ……あぁぅっいぃーっ」
瀧田が手を離しても、雅紀の手は止まらなくなった。ソファーに足のかかとをひっかけて、手の動きに合わせて腰も揺らしながら、自らを夢中で慰めている。
さっき空っぽになるほど出し尽くし、さすがにゆるくしか勃ちあがらなくなっていた前が、半勃ちのまま、とろとろと涙を流している。鏡に映る雅紀は壮絶に淫らで、瀧田はゴクリと唾を飲み込んだ。
……イキっぱなしですか……。凄いな。こんな反応のいいこは初めてだ。
……欲しいな……このこ。
貴弘に返すのは、惜しいかもしれない。
瀧田は雅紀の手を掴んで、動きを止めると、唐突にディルドを引き抜いた。
「あんっあーやっやーぁ」
快楽を中断されて、雅紀は震えながら、自分のものに手を伸ばした。ぎゅっと握りこみ、びくびく身体を震わせ続けている。
瀧田は興奮を鎮める為、ふうっと息を吐き出すと、3箇所に取り付けてあるビデオカメラのレンズに、ちらっと視線を送った。
……貴弘との約束は1週間……。その間に次の手を打ちましょうか。ふふ……久しぶりに胸がときめきますね。次は何をして遊ぼうかな。
「雅紀。とっても上手に出来ましたね。今度はこれを使ってみましょうか」
瀧田は雅紀に優しく囁きかけ、箱の中からエネマグラを取り出した。
仙台で新幹線を降り、西口のペデストリアンデッキに出ると、暁は酔ったような足取りでベンチに近づき、ドサッと腰をおろした。
手に握りしめたままのスマホを操作し、雅紀に電話をかける。
あれから何度かけたか分からない。何度かけても通じない。同じ案内メッセージが流れるだけだった。
「っ……くそっ……」
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