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番外編『愛すべき贈り物』134
「でもあなた、モデルの仕事、あまり好きじゃないでしょ?」
「うーん……。好きじゃないっていうより、悔しいんだよね。俺、メンズモデルとしては体格いい方じゃないじゃん?10代20代のうちはまだ良かったけどさ。最近はちょっと限界感じてる。俺、結構負けず嫌いだしさ。今より上狙えないんなら、将来見据えて方向性変えてみてもいいかなーって感じな」
里沙は祥悟の目をじっと見つめながら真剣に話を聞いていたが、ようやく頬をゆるませて
「そう。祥もいろいろ考えてるのね。なんかちょっと安心した。思ったより全然しっかりしてるわ」
祥悟は途端にムスッとなった。
「ひどいな~。俺だっていつまでもバカやってる子どもじゃないんだよ。つーか、俺のことより、里沙、問題はおまえの方じゃん。遊ぶの悪いなんて言ってないけどさ、俺と違って女なんだし、この先、結婚とかあるわけだろ?出来ればもっと自分を大切にして欲しいんだよね。そろそろいい人見つけてさ、一対一の真面目な恋愛、してみりゃいいじゃん」
微笑んでいた里沙の顔が、また強ばった。目を伏せて膝の上の手をじっと見つめて
「私、多分、結婚はしない。ずっと独りは寂しいけど……しないと思う」
「なんでだよ?」
里沙は手を握ったり閉じたりしながら
「好きな人、いるの。もう何年もずっと想ってる大好きな人。でも、その人とは、絶対に結婚出来ないから。だから私……」
ずっと聞きたかったけど、絶対に聞きたくなかった答えだ。でも、里沙の口からはっきり聞ければ、引き摺り続けた想いに、踏ん切りをつけることが出来るのかもしれない。
「ふうん。結婚出来ないって、なんで? もしかして相手、既婚者とか?」
祥悟は、何でもないことのように、さり気なく里沙を誘導してみた。里沙は両手をぎゅーっと握り締めて
「うん。そんな感じ、かな」
「奪っちゃえばいいじゃん。相手は里沙の気持ち、知ってんの?」
「奪うなんて……。私の気持ちは、多分、知ってると思うけど……でも、分からない。告白したの、もう随分前だし」
「……はっきりさせんの、怖いわけ?」
里沙の顔から表情が消えた。ぼんやりと虚ろにテーブルの上を見つめている。
「分からないな。どうなんだろう。自分の気持ち。もうずっと中途半端なままできたから、自分でもよく分からないの」
「そっか……。じゃ、忘れちゃえば?見込み、ないんだろ?」
「うん……。そうね。そうしたいって自分でも思うわ。ずっと引き摺っててバカみたいだなって。……でも……ダメなの。どうしても、忘れられない」
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