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番外編『愛すべき贈り物』136

「離せよ。馴れ馴れしく触んな」 祥悟は暁の手を振りほどくと、さっさと歩き出した。暁は首を竦めて後に続く。 「大通りに出たらタクシー拾うぜ。祥悟くん、君の家はどこ‍だ?」 祥悟はムッとした顔で振り返り、暁を睨みつけた。 「あのさ。俺、あんたのこと許したわけじゃないの。自分でタクシー拾って帰るから、構うのやめてくれる‍?」 里沙とのやり取りで、すっかり毒気を抜かれたように大人しくなっていた祥悟が、また可愛げのないことを言い出した。 暁は首を竦めて、祥悟に歩み寄ると、 「祥悟くん、君さ。なんつーか……可愛いのな」 そう言って顔を覗き込んだ。 「は‍ぁ?」 祥悟の眉間の皺がいっそう深くなる。 「や。里沙とおない歳なら、俺より上なんだろうけどな。君ってすっげーツンデレだよなぁ。うん、可愛いわ、マジで」 祥悟の顔が更に鬼のようになる。 「は‍?なに‍それ?おまえ、俺に喧嘩売ってんの‍?」 「いやいやいや。喧嘩なんか売ってねえって」 暁は慌てて手を振りながら 「君さ。大好き過ぎるだろ、里沙のこと」 睨む祥悟に、暁は意外に真顔で 「ただのシスコンって感じじゃねえんだよなぁ。君、さっきの里沙とおんなじ顔してるぜ。自分の気持ちにがんじがらめになっちまって、途方に暮れてる……みたいな感じだな」 祥悟はキっと暁を睨んだまま 「おまえ、なんなの‍? いい加減にしろよ。へらへらして、人のこと馬鹿にしやがって」 「馬鹿になんかしてねえよ。たださ、愚痴聞くぐらいだったら、いくらでも付き合うぜ?」 「はっ。冗談。俺は里沙みたいなお人好しじゃないんだよ。おまえみたいないい加減な男に愚痴言うくらいならな、どっかで男引っ掛けて、気持ちいいことした方がマシだっての」 毒づく祥悟に、暁は自分の頭をガリガリかいて 「そういう格好でさ、綺麗な顔してんなこと言うなって。あーそうか。やっぱ君さ、里沙に似てんだわ。こうして改めて見ると、うん、似てる。やっぱ君ら、美人姉弟だよなぁ」 言いながらへらへら笑って、祥悟の肩を抱くと、促すように歩き始めた。 祥悟はすかさず暁の手を振りほどいて反論しようとして……止めた。こいつの言動にいちいちムキになって反応するのが、急にバカバカしくなってきた。 正直、どきっとしたのだ。 暁の鋭い指摘に。 里沙と話していた時、自分は極力感情を押し殺していたつもりだった。里沙への想いなんか、絶対に悟られないようにしていたはずだ。里沙は、気づいていなかった……と思う。 でもこの男は……。 自分の想いに踏ん切りをつけたくて、とうとう里沙を問い質してしまった。でも最後まで問い詰めることは出来なかった。 ……なにやってんだろ、俺……。

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