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第29章 夢見月1※

「ふん……。言いたいヤツには言わせておくさ」 桐島は鼻で笑うと、グラスをあおった。瀧田はため息をつき 「お祖父様の遺言の件だって、まだ見つかっていないのでしょう?まずはそちらを解決した方がいいと、私は思いますけどね」 「言われなくてもちゃんと動いている。優秀な探偵を雇っているからな」 そう言って皮肉な笑みを浮かべた桐島に、瀧田は眉をひそめ 「…早瀬暁にその件を?」 「そうだ。一石二鳥だろう?邪魔な鼠を追い払って、調査もさせている。そう簡単には見つからないからな、ヤツは当分戻っては来られないだろう」 瀧田はしばらく無言で考えていたが、やがて穏やかな笑みを浮かべて 「なんだか疲れてますね、貴弘。独立の準備は上手くいっているんですか?」 「まあな。最初からそうトントン拍子に事が運ぶなら苦労はないさ。だが、お前の人脈と出資してくれた金が、何よりも力になっている。感謝しているよ、総。全てお前のお陰だ」 瀧田はにっこり微笑むと、 「貴弘。可愛いお人形さんの素敵な動画、一緒に見ませんか?きっと疲れも吹き飛びますよ」 「動画もいいが本人に会いたいな。」 「そろそろ目を覚ます頃です。では本人も一緒に上映会を楽しみましょうか」 小野寺は、昼休み時間終了まで、ランチを食べながら、暁に付き合って話を聞かせてくれた。 小野寺に礼を言って別れると、暁は都倉の勤めていた会社を訪ねてみた。 地元では有名な建築デザイナーの興した会社で、それほど大きくはないが、経営状態は良好だという。 受付で、電話での面会約束のことを告げると、すぐに応接室に通された。ほどなく現れた社長兼デザイナーの藤堂薫は、ソファーから立ち上がった暁の顔を見て、懐かしそうに頬をゆるめ 「久しぶりだな、都倉。ようやく戻ってきたか。また俺の仕事を手伝ってくれるんだろう?」 そう言って気さくに暁の肩を叩き、ソファーに腰をおろした。 目が覚めているはずなのに、まるで夢の中にいるように、身体がふわふわと浮いているような感じがする。視界には極彩色の光が飛び交い、うわんうわんと耳鳴りがしていた。 「薬はあまり使うなと言ったはずだ」 「常用性のない軽いものですよ。雅紀は素直だからトリップしやすいだけだ」 瀧田の言葉に桐島はため息をつき、ベッドの側に歩み寄って、ほあんとした顔で自分を見上げる雅紀の頬を撫でた。 「ただいま、雅紀」 優しく話しかけ、かがみこんで唇にキスを落とす。雅紀は熱い吐息をもらし、焦点の合わない瞳を揺らめかせた。 瀧田は部屋の灯りを暗くして、 「これは夕べの雅紀の独り遊びの様子。可愛いですよ。それにとびきりエロティックだ」 壁に映し出された映像に桐島は目を向けた。 黒いシャツドレスの前をはだけた雅紀が、瀧田に抱っこされ、両足を開いたあられもない姿で、ディルドで自分の身体を慰めている。 傍らの雅紀に視線を戻すと、雅紀は映像も認識出来ていないのか、恥じらう様子もなくぼんやりとしている。 「貴弘が挿れてあげなかったから、雅紀は不満そうでしたよ。今日は抱いてあげるんでしょうね?」 「言っただろう。あの男の跡が消えるまでは、抱いてはやらん」 「ふふ……意地っ張り。可哀想な雅紀。今夜も欲求不満で独り遊びですか」 桐島は鼻を鳴らして、ベッドにあがると、雅紀を後ろから抱き抱えて座り 「玩具をよこせ」 瀧田がローションを浸して渡したディルドを受け取ると、後ろから腕を回して、雅紀の赤く熟れた入り口に押しあて 「だったら満足するまで、私が慰めてやる」 そう言ってゆっくりと中に突き入れていく。雅紀は桐島に身体を預けたまま、掠れた声でせつなげに鳴き、身を捩った。 浅い場所で止めて、中を抉るようにかき回してやると 「ああっあー……やっあーーん」 堪らない声で喘ぎ、全身を震わせる。 「いいか?雅紀。これが好きか?」 「いいっいぃーーーすきっあっすきぃーんっ…もっとぉ…」 「いやらしいヤツだ。もっとか。いくらでも苛めてやるぞ。その汚ならしい痣が消えたらな、私のものでかき回してやろうな」 「んっんっあぁ……いぃっ……きもちいっ……ああん……もっと…」 甘えた声でねだり、びくびく震える雅紀の身体を、桐島はとりつかれたように、夢中でディルドでなぶり続けた。 デザイン会社を後にして、次に暁が向かったのは、都倉秋音が通っていた高校だった。 小野寺があの場で連絡を取ってくれて、秋音の親友の坂本達哉とは、今日の夜7時に会えることになっている。それが終わったら、暁はいったん仙台での調査を切り上げて、新幹線で戻るつもりだ。 都倉の母校を遠巻きに眺めて、ぶらぶらと歩きながら、暁は雅紀のことを想っていた。 社長に頼んで、自分の名前は伏せて連絡を取ってもらい、雅紀に会う。 嫌がるかもしれない。迷惑がるかもしれない。 それでも、直接会って話がしたい。

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