593 / 605

番外編『愛すべき贈り物』142※

そのまま氷を口で受け取ろうとすると、智也の顔が少し遠ざかった。期待を外されて、祥悟が唇を尖らせる。智也は宥めるように、その唇に人差し指でそっと触れてから、祥悟のシャツの前を肌蹴させる。何をするのかと祥悟が怪訝な顔で様子を窺っていると、智也はにこっと笑いかけてから、祥悟の胸に顔を埋めた。 「……ぁっ」 思わずびくっと震えた。 冷たい。 一瞬何をされたのか分からなかったが、肌蹴てあらわになった胸の尖りを、氷でつつかれたのだと気づいた。いったん離れた氷が、また乳首に押し当てられる。敏感な蕾に予想しなかった刺激。祥悟の身体がまたぴくんと跳ねた。押し当てられた瞬間は冷たくて痛い。でも離れるとそこがじわじわじんじんと熱を持つ。 それが何度も繰り返され、冷たいのか熱いのか、訳が分からなくなっていく。氷が溶けてなくなるまで、その戯れは続いた。 「この、変態……っ」 氷がなくなり、顔をあげて祥悟の反応を窺う智也に、祥悟が切なげな顔で毒づく。智也はくく……っと笑って 「でも、気持ちいいだろう?もっと、する‍?」 智也のしたり顔がなんだか悔しい。でも煽られて身体に火がついているのは間違いない。 「もう、いい。それより、抱いて。痛くしていいから」 祥悟の切羽詰まった声に、智也はちょっと哀しそうに微笑んで頷くと、氷で冷えた唇を乳首に押し当てた。 「っも、やだ、おまえしつこい…っ」 乱暴にでいいから、めちゃくちゃに抱いて欲しいのに、智也はじわじわと全身にもどかしい愛撫を繰り返すだけだ。祥悟は堪らなくなってきて、智也の顔を引き剥がした。 「がつがつ抱いてくんねえなら、もう、帰るっ」 のしかかる智也の身体を押し戻し、下から這い出ようとすると、智也の腕が伸びてきて、今度はうつ伏せに押さえ込まれた。祥悟は首を捻って智也の顔を睨みつけ 「なんなの‍?おまえ。もういいっつってんだろっ」 「怒らないよ」 智也は祥悟を押さえつけたまま、前に手を伸ばして、祥悟のペニスをぎゅっと握り締める。 「……あぅっ」 思わずびくっとして、祥悟は声をあげた。決定的な愛撫を貰えずに焦らされ続けた祥悟のペニスは、既に痛いくらい勃起している。絡みついた智也の長い指でくにくにとされると、痛みとは別の甘い痺れが走り抜けて、祥悟は喘ぎながら腰を揺らした。 「君に痛くするのは好きじゃないんだ。分かってるだろう?」 「っぁ……いい、から。俺が、いいって、言ってんじゃん。……っもう、突っ込めってば」 「とろとろになった君のナカに入りたいな」 祥悟はもどかしそうにお尻を揺らして 「んあっは…ぁっ……も、無理っ。もぅ、離せって。酷く、してくんない、ならっ、おまえとは、寝ないっっ」

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!