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番外編『愛すべき贈り物』143※
悲鳴のような声をあげた祥悟に、智也はペニスから手を離して
「このまま、突っ込んでもいいのか?」
「いいっつってんじゃんっ。はやく、入れてよっ」
智也はため息をつくと
「……わかった。途中で泣き言は、言うなよ?」
「言うかよっ」
智也は起き上がり、いったんベッドから降りて、クローゼットからバッグを取り出してきた。
「そんなに痛いのがいいなら、縛るよ?いいのかい?」
祥悟は涙の滲んだ目で、智也を見上げて
「いいね。やっぱ、今夜は、智也で正解……。好きにしていいから、思いっきり、抱いてよ」
そう呟いて、うっとりと微笑んだ。智也は唇を噛み締めると、何かを吹っ切るように表情をガラッと変えて
「OK。じゃあ、俺の好きにする。他のこと、考えられないくらい、狂わせてあげるよ」
意地の悪い顔で微笑むと、バッグから革製の道具一式を取り出した。
祥悟はくぐもった悲鳴をあげ続けていた。両手は後ろ手に縛められて、目隠しと猿轡をされている。
ほぐしもせずにローションだけで突き入れられた時は、身体が真っ二つに裂けるような激しい痛みを感じた。でも、その痛みこそが、自分の欲しているものなのだと痛切に思う。
視界と声を奪われ、散らすことの出来ない苦痛と快楽は、内に向かって蓄積していく。智也にとっては迷惑なことだろうが、今は優しく抱かれたくない。
罪を犯し続けている自分を罰して欲しい。
どこにも持って行き場のない心を縛って欲しい。
歪に積み重ねてきた時は、もう修復は不可能だ。バランスを崩せば、全てが瓦解する。
今、里沙のところに乗り込んで、彼女の口から聞きたくもない事実を聞いてしまったら、自分は間違いなく決定的な罪を犯してしまうだろう。
もういっそ、そうしてしまえたら楽になれるのだ、という破滅への甘美な誘惑に負けてしまいそうになる。
……ああっくそっ。やめろって。頼むから、消えてくれっっっ
智也の上に跨って腰を激しく上下に使いながら、祥悟は次々と浮かぶ里沙の姿を追い払っていた。やがて、局所の痛みは和らいでいき、動く度に込み上げてくる甘い疼きに、全身の感覚が支配されていく。
女を抱く時の刹那的な快感よりも、抱かれている時のじわじわと昂っていく気持ちよさが好きだ。男の快感は出せば一気に冷めるが、後ろに入れられて得られる悦楽には、終わりがないような錯覚に浸れる。昂らされて確実に自分の雄の欲情も煽られているはずなのに、主導権を相手に委ねるこの行為の方に、何故かすごく安らぎを感じる。
「ここで、イきたい?」
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