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番外編『愛すべき贈り物』149
「へえ……ベタ褒めなのな。でもさ、そしたらあの男、もう里沙とは関係解消じゃん?寂しくねえの?」
里沙は笑顔のまま首を振り
「そりゃ、ちょっとは寂しいけど……でも良かったなーって素直に思うわ。私と暁は似たもの同士だったから。恋愛関係じゃなくてね。同志、みたいな感じで。お互いにいい相手見つけて幸せになれたらいいなぁって思ってたし」
「ふうん……。そんなもんかねぇ……」
里沙の心情が、祥悟にはいまいち理解出来ない。だいたい、元セフレと恋人連れで鉢合わせになった早瀬の方は、心中穏やかじゃなかっただろうと思うんだが……。
「ま。俺には関係ないけどね」
つまらなそうに呟いて、グラスを傾ける祥悟に、里沙はちょっといたずらっぽい目をして
「でも、意外だったわ。暁ったらあれだけ、俺はストレートだ~って言い張ってた癖に、ようやく出来た本命は男の子なんだもの」
……?!
祥悟は危うくむせそうになって、口の中身をごくんと飲みくだすと、グラスをおろして、笑う里沙の顔をまじまじと見つめた。
「は?今……なんて言った?」
「お・と・こ・の・こ。すっごい美人だったけど、普通に男の子なのよ。暁の恋人。びっくりでしょ?」
「…………冗談」
祥悟の綺麗な眉がきりきりとあがった。
……あの男の恋人が男?……は?何それ。意味わかんねーし。
里沙は急にご機嫌斜めになった祥悟に気づかないのか、ちょっと遠くを見るような目をして
「ほんと、いい雰囲気だったな……。初々しくて幸せそうで。まだ付き合い始めって感じでね。うん、ほんと、微笑ましかった」
独り納得して楽しそうな里沙とは反対に、祥悟はふつふつと沸き起こる怒りに、ますます顔を険しくしていった。
……早瀬暁……。あのチャラ男。ぜってーに許さねえっ。
いや。何がムカつくって、あいつ、俺の気合いの入った女装と渾身の誘惑を「やっぱ俺、男は無理だわ」とあっさり退けやがったくせに、美人だか可愛いだか素直だか知らないが、あっさり男相手に陥落しやがって~。
「……マジでムカつく……」
思わず口をついた呟きに、里沙はきょとんと首を傾げた。
「え?……祥、今、何か言った?」
祥悟は眉間の皺を瞬時に消すと
「いや、別に。それより、その早瀬の本命彼氏くん?あの遊び人がまじ惚れしたくらい綺麗ならさ、俺も1度会ってみたいな」
里沙はふふっと笑って頷くと
「そうね。もう少し2人の付き合いが落ち着いたら、私もゆっくり会って話してみたいわ。暁に頼んでみましょうか」
……いや。早瀬は嫌がるだろ。自分の大事な恋人に、遊びまくってた頃のセフレを会わせて喜ぶヤツなんかいねえっての。
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