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夢見月6
東京駅で快速電車に乗り換えた。
あと40分ほどで雅紀の会社がある駅に着く。
さっき新幹線の中で、田澤社長から電話がきた。まだ別荘の場所は特定出来ないが、雅紀の先輩の杉田という社員と連絡が取れて、駅で会えることになっているという。
こうしている間にも、雅紀がどんな目に遭っているかと思うと、胃がキリキリしてくる。ひと駅ひと駅の時間が、恐ろしく長く感じた。
駅に着き、改札を抜ける。杉田という男を探して、改札のまわりを見回すと、2人連れのサラリーマンが、暁にまっすぐ近づいてきた。
「あの……早瀬さん……ですよね?」
緊張した表情で1人が声をかけてくる。
「ああ。早瀬です。あなたが杉田さん?」
「はい、杉田です。あ、こっちは同僚の…」
「佐武と言います。篠宮とは同じ部署で、彼の教育担当をしています」
暁は2人を素早く観察した。どちらも暁と同年代であろう真面目そうな好青年だ。緊張した面持ちで、雅紀のことを真剣に心配していてくれている様子だった。
「すみません。うちの田澤から話は聞いていると思いますが、一刻を争う事態かもしれないので、早速お話を聞かせてくれますか?」
暁の言葉に杉田が頷き、勢いこんで話し出そうとするのを、佐武が割って入った。
「その前に、ちょっといいですか?」
暁は焦りからくる苛立ちを抑え、佐武に向き直った。
「何でしょうか?」
「あなたは探偵事務所の方だと伺ってますが、篠宮雅紀くんとはどういったご関係ですか?」
「佐武っ、今はそんなこと…」
「いや。これは聞いておかないと。俺たちが話そうとしているのは、社内機密だよ、杉田。もし、篠宮が何もなく無事で、空騒ぎで終わった時は、その情報がどこから出たソースかが問題になる。軽はずみには話せない」
佐武の冷静な言葉に、杉田は唇を噛み締めた。暁はますます、この佐武という青年に好感を抱き、
「佐武さんのおっしゃる通りですね。失礼しました。まずは私と雅紀くんの関係をご説明します」
暁の言葉に2人は神妙に頷いた。
瀧田が命ずるまま、雅紀は次々と恥態をさらした。夕べこの部屋でしたのと同じように、ディルドを握らされ、自分で自分を慰めさせられた。
薬は使われていない。それでも身体は刺激にちゃんと反応した。
心は嫌だと拒絶して屈辱に震えているのに、身体は悦び、狂い乱れる。
雅紀は絶望にうちひしがれた。
瀧田の言うように、自分は淫乱なのかもしれない。心の底から好きな暁が相手でなくとも、誰に何をされても悦びを感じる恥知らずなのかもしれない。自分と付き合う人間が皆、おかしくなってしまうのは、もしかしたら自分のこの淫らな性質が、原因なのかもしれない。
疲れきって、ソファーにぐったり横たわる雅紀の髪を、優しく撫でてくれるのは、暁の大きな優しい手ではない。
もう彼には会えない。
夢の中にすら、暁はもう現れてはくれない気がした。
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