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夢見月7
「ではあなたと篠宮は恋人……ってことですね?」
暁の説明に、2人は対照的な反応を示した。いやに冷静に暁を見つめる佐武。
愕然として、暁から目を逸らした杉田。
佐武はちらっと杉田に気遣うような視線を投げた後で
「篠宮は男です。あなたも男ですよね?」
「男同士です。でも真剣に付き合ってます」
「なるほど……。では、休み明けにあいつの首についてた派手なキスマークは、あなたの仕業か」
佐武の言葉に、暁は無言で首をすくめ、杉田は怒った顔で、暁を睨み付けた。
「雅紀はストーカーされて、俺のアパートに隠れていました。その件と今回の連絡が取れないこと、無関係じゃないと俺は思ってる。証拠はありません。今は俺の言葉を信じてもらう以外ない」
「分かりました。もしその話が事実なら、篠宮はヤバい状況かもしれない。瀧田氏のセカンドハウスの場所なら分かります。地図をプリントアウトして持ってきてる。あなたを信じて……預けます」
「ありがとう。助かります。もし万が一、これが空振りで終わっても、責任は全て俺が持ちます。あなた方は会社から何を聞かれても、知らぬ存ぜぬで押し通してください」
佐武から地図を受け取り、一礼して歩き出そうとした時、それまで無言だった杉田が
「あのっ……篠宮はっ……篠宮くんは俺にとっても、大切な……大事な後輩です。必ず助け出してやってくださいっ」
杉田の必死な表情に暁は頷くと
「ありがとう。必ず。無事に連れ戻します」
暁は受け取った地図を握りしめ、走り出した。
駅のロータリーには、社長からの連絡通り、桜さんが車で待っていてくれた。暁の姿をみると、桜さんは運転席から降り、車のキーを暁に渡して
「囚われの姫の居場所は分かった?早く駆けつけて救い出すのよ~」
「サンキュっ桜さん。恩に着るよ。姫の次に愛してるぜ」
桜さんは顔をしかめ
「2番目なんか御免だわ。じゃあね」
暁は桜さんに手を振ると、車を発進させた。
「食べなければダメだと言ったでしょう?私のお人形さんは我が儘ですね。さあ、口を開けて」
食事を運んでくる給仕たちは、皆一様に無表情で必要なことしか話さない。だが、男のくせに奇妙なドレスを着て、瀧田の膝に抱っこされ、スプーンで食事を与えられている惨めな姿を、見られていると思うといたたまれない。
こんなおかしな時間が、あとどれだけ続くのだろう。
自分はこの人形館から出られる日がくるんだろうか。
瀧田の差し出すものを嫌々口に入れ、味などまったく分からないまま咀嚼し、機械的に飲み込む。
雅紀はぼんやりと、もう随分昔になってしまったように感じる、暁との時間を思い出していた。
暁の差し出すお粥の乗ったスプーンに、おずおずと口を開けた。あの時は恥ずかしかったけど、世話を焼いてくれる暁の優しい気持ちが嬉しかった。
どうせこんな風になるのなら、もっと素直に甘えておけばよかった。
表情を失い、本当に人形のような顔になってしまった雅紀の目から、涙が一筋零れ落ちた。
「さあ、雅紀。口を開けて」
瀧田に促され、雅紀はまた機械的に口を開いた。
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