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哀しい嘘。近くて遠い月5
「雅紀。俺と一緒に帰ろう」
暁の穏やかな声に、雅紀は背を向けたまま唇を噛みしめ
「どうして?あなたとはもう終わったって…」
「つまんない嘘はよせって。おまえの嘘なんかバレバレ。どうせ桐島やそいつに脅されてんだろ?」
雅紀はくるっと振り返り、
「嘘なんかついてないっ。早くここから出て行って。総一、俺、頭痛い。もう寝るから…」
「雅紀、俺の目見てちゃんと話せよ。別れ話だかなんだかしらないけどさ、2人っきりできちんと話そう。聞いてやるよ、おまえの話。約束しただろう?」
「……っ約束なんか……っ。お願いだから帰ってください。もう2度と会いに来たりしないで…」
だんだん声が弱々しくなっていく雅紀に、瀧田はため息をつくと
「雅紀。彼は納得しないみたいです。困りましたね。梶たちを呼んで、少し痛めつけてあげましょうか?」
雅紀は暁に見られないように、瀧田の顔を必死の形相で見つめ、首を横に振る。
「なあ、瀧田さん。あんた席を外してくれないか?俺は雅紀と話がしたいんだ」
「残念ですが、それは出来ません。貴弘から預かった大事な身体です。君みたいな礼儀知らずに任せるわけにはいかないでしょう?」
「はっよく言うぜ。あんた人形遊びが趣味なんだってな。雅紀はあんたの人形じゃない。大事な身体だっていうなら、桐島はなんで、あんたみたいな変態に雅紀を預けた?」
挑発的な暁の言葉に、雅紀は小さく悲鳴をあげ
「やめてっ暁さんっもう帰って。ね、総一さん、お願いだから…」
すがりつく雅紀の手を払いのけると、瀧田はにっこり微笑み
「私を侮辱しましたね?早瀬暁。汚ならしい鼠の分際で、この私を。いいでしょう。自分の立場を思い知らせてあげますよ」
「待って、総一さんっ違うっ待って」
瀧田は邪魔をする雅紀を押し退けて、ベルを鳴らし、ドアの開閉スイッチを押した。
先程の男たちが開いたドアから入ってくる。身構える暁に、瀧田がポケットからナイフを取り出し、息をのんで逃げようとする雅紀を押さえ込み、顔に突きつけてみせる。
「大人しく制裁を受けなさい。でないと可愛い雅紀の顔に、一生消えない傷が残りますよ」
「やめてっお願いっ暁さんには手を出さないって…」
暁は構えを止め、両手をあげると
「あんた、やることが汚いよな。わかったよ。抵抗はしない。雅紀を傷つけるのはよせ」
瀧田の合図とともに、男たちは暁の腹に拳を叩き入れた。悲鳴をあげ、もがく雅紀を、瀧田はしっかりと抱え直した。
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