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希望のかけら2

どんな状況だろうと、今、傍らには雅紀がいる。 それは、何よりも暁の心の支えだった。 仙台のホテルで絶望にうちひしがれていたあの孤独な夜を思えば、今の状況は天国だ。 瀧田は屋敷の至る所に監視カメラがあり、この部屋の中にも、設置されていると言っていた。 ……別に構わねえさ。見たけりゃ見ろ。俺と雅紀はラブラブなんだよ。 暁は、そっと雅紀の唇に優しいキスを落とした。 ぐっすり眠って、目が覚めたら、目の前に暁がいた。自分を優しく見下ろし、微笑んでいる。 ……よかった……。夢の中では、まだ会えるんだ。暁さんと。 雅紀はほっとして、ふんわりと微笑んだ。 「おはよ。雅紀。よく眠ってたな」 そう言って、雅紀の頭をくしゃっと撫でる。 「おはようございます。暁さん」 雅紀も挨拶を返し、ふいに顔をしかめた 「暁さん……?……その顔…」 暁は眉をへの字にして 「ははっ格好悪いったらないよな~。颯爽と助けに来たはずがさ、お前の前でボコボコにされちまってさ」 暁の言葉に、雅紀の目は見開かれていく。手を伸ばし震える指で、殴られてアザになった口の横をなぞり 「うそ……。夢……じゃない……?」 「あったり前だろ。夢じゃねーよ。夢ならもっとまともな顔の俺と会ってくれって」 雅紀は、ようやくちゃんと覚醒したのか、辺りを見回し、小さく悲鳴をあげて飛び起きた。 「うそっ。暁さんなんで?ねえ、嘘でしょ?なんでここにいるんですか!」 「お前を助けに来たからに決まってんだろ。遅くなって悪かったな」 雅紀は暁のシャツにしがみつき 「違うっ。そうじゃないでしょっ。なんで来たりしたの!……っ!まさか暁さんも…」 「そ。捕まっちまった。でも安心しろよ。俺がついてるからな。絶対にお前連れて逃げてやるからさ」 雅紀は夕べのことをすっかり思い出したのか、みるみる青ざめ 「逃げて!俺のことなんていいからっ早く!」 暁は雅紀をぎゅっと抱きしめ 「馬鹿言うなって。お前と一緒じゃないなら、どこにも行かないぜ」 「あ……暁さんの馬鹿!夕べの俺、見たんでしょ?だったら俺のことなんか…」 「見たよ。めちゃくちゃ綺麗だった。でもさ、俺に抱かれてる方が、お前もっとエロくて可愛いぜ。やっぱお前には俺じゃなくちゃダメなんだな」 ぎゅうぎゅう抱きしめられて、頭をなでなでされて、雅紀の身体から強ばりが消える。 「……エロくて……可愛い……?なに、言っ」 「そ。でもってめちゃくちゃ綺麗。俺のエロかわ天使だもん、お前。」 「……淫乱じゃ……ない?……俺、汚く……ない?」 「淫乱じゃねえよ。エロいけどな。俺は好きだぜ。汚い?どこが?すっげー綺麗だよ」 「でも……俺……悪い人間だって……俺が淫乱だから……俺のせいで…」 「ばーか。悪い人間は、桐島と瀧田だろ?人を拐って監禁してさ。お前は、被害者なの。あの変態野郎に洗脳されてんじゃねえよ」 雅紀の目から涙がぽろぽろ零れた。暁は辛そうに顔を歪め 「ごめんな。俺がもっと早く、お前の話を聞いてやればよかったんだよな」 「ううん。あき……らさんは……悪くない……俺が……俺…」 「ゲイだって悩んでたんだな?俺に嫌われるって思った?嫌うわけないじゃん。お前がゲイじゃなかったら俺たちただの飲み友達だ。だいたいお前抱ける時点で、俺もストレートじゃねえだろうが」 「暁……さん……俺………桐島……貴弘さんと……セフレで」 「ん。それも分かった。もういいよ。今は俺のことだけ、愛してくれてんだよな」 「ごめんなさぃ……言えなくて……俺…」 暁は、雅紀の頭をぐしゃぐしゃと撫でると 「謝んなって。俺もお前に言えなかったこと、あるって言ったろ。あのな、雅紀、俺な…」 ふいにドアがダンっと開いて、不機嫌な顔の瀧田が現れた。 「朝から随分な、いちゃつきぶりですね。再会を喜ぶのも結構ですが、自分たちの立場をお忘れですか?」 瀧田の出現に、雅紀はびくっとして暁にしがみついた。暁は雅紀をかばうように抱きしめ 「おはようございます。瀧田さん。もちろん忘れてないですよ。俺たちは囚われの身だ」 「夕べの話を覚えてますか?」 「もちろん。ただ、その前に、出来ればなんか食べさせてくれませんかね。俺、昨日はあんまりまともに食ってなくて。飯食わないと、ハードな運動はちょっと無理かも」 悪びれない暁の態度に、瀧田は憮然とした表情のまま 「では食事の支度をさせましょう。用意が出来たら呼びにこさせますから、シャワーを浴びてください。着替えはクローゼットにあるものを」 瀧田はそれだけ言うと、踵を返し部屋を出て行った。 雅紀は強ばった顔で、暁をまじまじと見つめ 「暁さん……夕べの話って?ハードな運動って……何のこと?」 暁は問いには答えず、にやっとして 「シャワーだとさ。雅紀、一緒に浴びようぜ」 雅紀は赤くなり拒絶の言葉を口にしかけ、すぐに思い直して、コクンと頷いた。

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