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番外編『愛すべき贈り物』157

祥悟の素直な謝罪に、雅紀はふんわり微笑んで首を振り 「ううん。俺がついてくって言い張ったんだし。俺の方こそ、役に立たなくてごめんなさい」 暁は2人のやり取りを黙って見守りながら、そっと里沙と顔を合わせた。里沙も済まなそうな顔をしている。 ……えらい素直じゃん、祥のやつ。流石に懲りたか。 暁はため息をつくと、少し表情を和らげ 「ま。本気で悪いって思ってんなら、俺から言うことは何もねえよ。今回の件は、おまえこそ被害者だからな。祥、身体の方はどうだ‍?」 「ん。少し寝たから、怠いのはだいぶ抜けた。まだちょっと力入んないけど、一日休めば大丈夫そう」 「そっか。今日はこのまんまこっち泊まってゆっくりしてな。明日、移動が大丈夫そうだったらさ、俺らも付き添って向こうへ帰るぜ」 祥悟はちょっと驚いたように目を見張り 「なに‍?暁くんたち、明日まで付き合ってくれんの?」 「ああ。もともと俺は、里沙のストーカー対策で来てるんだしな。そっちが完全に解決するまでは、おまえらに付いててくれって、里沙の親父さんからも正式に依頼されたんだ。ま、そっちはどうやら解決に向かいそうだしな」 暁の言葉に、今度は里沙が目を見張った。 「じゃあ、ストーカーしてた人、誰だか特定出来たの‍?」 暁はちらっと祥悟の顔を見た。祥悟は言うなと目配せしている。 「んー。ああ、一応な。調査の結果、人物は特定出来た。うちの事務所が、そいつと接触して弁護士と一緒に交渉中だ」 「……そう……。ごめんなさい。いろいろ面倒かけて。やっぱり……ファンの人だったの‍?」 暁は苦笑いして 「まあな。デビュー当時からのおまえの熱烈なファン。ま、ストーカーしちまう時点で大分こじらせちまってるから、もうファンとは呼べねえけどな」 里沙は哀しそうに目を伏せた。幼馴染の仕業だと、祥悟は里沙に明かすつもりはないらしい。確かに、自分のせいで祥悟が暴行を受けたと知れば、里沙は余計に苦しむだろうが……。 「ま、その件はとりあえず、俺らに任せてくれ。これ以上こじらせねえように、打てる手は打つからさ。詳細が分かった時点で、また報告するよ」 「ありがとう、暁」 暁は里沙に微笑むと、再び祥悟に向き直った。 「そんでさ、祥悟。もう一つ、別件な」 「……別件‍?」 首を傾げた祥悟に、暁は頷いて 「今、外に橘さんが来てる。おまえに話があるんだとよ」 その一言に、祥悟の眉がきりきりとあがった。キツい顔で暁を睨みつけ、ドアの方に目をやる。 「会いたくねえし。追っ払ってよ」

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