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寄り添うかけら3
「やっぱ、美味いっ。俺はアメリカの甘いスコーンが好きだけど、イギリス流のプレーンタイプはまた違う魅力ですね。これ、粉の配合は、ここのシェフのオリジナルでしょ?レシピはやっぱ秘密ですかね?」
暁の質問に、給仕はちょっと困惑気味に首を傾げ
「さあ……わたくしでは、そこまではわかりかねますが…」
暁はうんうん頷いて
「そうですよね。変な質問してすんません。スコーンは自分でもけっこう焼くんで、ついついレシピが気になっちまって」
「……。ではよろしければ、次のお食事までに、料理人に聞いておきますが」
「マジですかっ?いや~すみません。そうして頂けたら嬉しいなあ」
暁は、旺盛な食欲で、みるみるうちにプレートの中身を平らげていく。
梶は半ば呆れ半ば感心した様子で
「なんていうか……大物だな、あんた。ま、せいぜい腹満たして体力つけときな。うちのご主人の要求は厳しいぜ。途中でへばったら、あの綺麗な兄ちゃんは、好事家どもの玩具にされるからよ」
梶の言葉に、ベッドの布団の山がもぞもぞ動いた。暁は梶を睨みあげ
「んじゃ、俺がへたばらないように声援よろしく。雅紀はまだ当分寝てるだろ。あ、目が覚めたらあいつにも、この豪華な朝飯食わせてもらえるんですよね?」
「はい。そのように承っております」
暁は頷いて、ひたすらプレートの中身を口に放り込んでいった。
食事を終えると、紅茶を置いて、給仕と梶は出て行った。暁は食後の一服をしてから、軽く伸びをしてベッドの所へ行くと、布団を少しだけまくって、隙間から雅紀の横に潜り込んだ。
布団の中には、不安そうに顔を強ばらせている雅紀の顔。
「まだ大人しくしてろよ。助けがくるまで時間稼ぎな」
小声でそう言うと、雅紀は微かに頷き、まだ不安そうに瞳を揺らす。暁はにかっと笑って
「俺を信じてろ。何があっても俺だけ見てな。他のヤツらの存在なんか忘れて、ずっと俺のことだけ見てるんだぜ」
そう囁くと、雅紀を抱き寄せ胸に顔を埋めさせて、優しく髪を撫でてやる。
……時間からしてどうしても一回は、あの変態野郎の前で抱かないと無理かもな……。
雅紀は泣いて嫌がるだろう。出来れば回避させたい。他に打つ手はないか。
1時間ほど、雅紀を抱き締めて、夢見心地でうつらうつらしていた。ドアがノックされて、先ほどの給仕がワゴンを押して、梶と一緒に入ってきた。暁は素早く雅紀にキスすると、ムクッと起き上がり
「んー?雅紀はまだ寝てるぜ~」
「叩き起こせとさ。ご主人様は退屈らしい。さっさと飯食って、ショーを始めろだと」
暁は顔をしかめ、傍らの雅紀を見下ろした。雅紀は不安気に布団から目だけ出して、暁を見上げている。
……可愛い顔してるよな~こいつっ。……って、んなこと言ってる場合じゃねえし。
暁は雅紀の顔をのぞきこみ、ちゅっと音をたてて口付けた。雅紀は真っ赤になって顔を背ける。
「雅紀、起きろよ。朝飯だってさ。焼きたてのスコーンがついてんだぜ。すっげえ美味いから、お前も食ってみな」
ベッドから降りて、雅紀の身体を抱き寄せ、またキスをする。雅紀は周りの目を気にしながら、じたばたと抵抗している。梶は呆れ顔で、
「おいっ。いちゃついてる場合かって。いいからとっとと起きて飯を食いな」
梶の声にびくっとして大人しくなった雅紀を抱き上げ、暁は椅子まで連れて行った。ライティングデスクから椅子を引っ張ってきて、雅紀の隣に座ると
「これな、ここを割ってクリームとジャムつけて食ってみ。あ、口ん中の水分取られるから、喉に詰まらせんなよ。ほれ、オレンジジュース。フレッシュなのを絞りたてだから美味いぜ~」
俯き項垂れている雅紀に、まるで母親のように甲斐甲斐しく世話をやく暁に、梶はため息をつき
「うちのご主人のお人形遊びと変わんねえだろ、それ」
「いやいやいや。あの変態野郎と一緒にすんなっ。全っ然違うからっ。俺たちには愛があるんだもんな~雅紀」
雅紀は口に押し込まれたスコーンをもぐもぐしながら、耳まで真っ赤にして、恨めしそうに暁を睨みつけた。
「ようやく来ましたか」
朝食を済ませ、梶に急かされながらさっとシャワーを浴び直すと、2人揃って夕べの人形部屋に連れて行かれた。
部屋に入ると、不機嫌な顔の瀧田が待ち構えていて、
「では、さっさと見せてもらいましょうか。2人をベッドルームへ」
青い顔で暁の後ろに隠れている雅紀の腕を、梶が掴もうとする。
「乱暴すんな。抵抗なんかしねえよ。雅紀、おいで。俺とちょっといいことしようぜ」
「や……暁さん…」
顔を歪め尻込みする雅紀を、暁は優しく抱き寄せ、小さな顔を両手で包むと
「な。俺を信じて俺だけ見てな。周りにいるのはただのカボチャだ」
優しく微笑むと、ちゅっと触れるだけのキスをした。雅紀は顔を赤らめながらも、まだ不安気に瞳を揺らめかせている。
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